Note 03 — 第だい8話はちわ

『チ。』第だい8話はちわの研究けんきゅうノート [ 翼つばさの材質ざいしつ ]

第だい8話はちわで四人よにんが「真理しんり」という同おなじ一語いちごを使つかい、四人よにんとも別べつのものを指さしている。それでも対立たいりつする二人ふたりの会話かいわが届とどくのは、どちらも、その語ごを自分じぶんの説せつより上位じょういに置おいているからである。

全ぜん 18 節せつ図版ずはん 20出典しゅってん 0初出しょしゅつ 2026-08-15更新こうしん 2026-08-15
第8話の扉の星 支給の画の上に、星を重ねただけの層である。

蝋ろうで翼つばさを作つくった少年しょうねんがいた。太陽たいように近ちかづきすぎて、翼つばさは溶とけ、彼かれは落おちた。

千せん年ねん以上いじょうのあいだ、この話はなしは同おなじ教訓きょうくんとともに語かたられてきた。分ぶんを超こえるな、と。上うえを目指めざすこと自体じたいが罪つみなのだ、と。存在そんざいに階級かいきゅうのある宇宙うちゅうでは、高たかく飛とぼうとすることは、秩序ちつじょへの侵犯しんぱんだった。

第だい8話はちわで、死期しきの迫せまった老人ろうじんが、この話はなしを読よみ替かえる。

彼かれの誤あやまりは、太陽たいように挑いどんだことではない。蝋ろうが溶とけると知しらなかったことだ、と。

一語いちごだけ入いれ替かえると、教訓きょうくんが反転はんてんする。傲慢ごうまん(傲慢/superbia/pride)から、無知むちへ。 そして結論けつろんは「挑いどむな」から「もっと良よい翼つばさを作つくれ」に変かわる。

蝋ろうで駄目だめなら、鋼はがねを作つくればいい。

これは、後あとの数百すうひゃく年ねんで人類じんるいが実際じっさいにやってきたことである。限界げんかいを、越こえてはならない線せんとしてではなく、まだ足たりていない条件じょうけんとして扱あつかうこと。そのやり方かたで、人ひとは空そらを飛とび、海うみを渡わたり、月つきに立たった。同おなじやり方かたで、取とり返かえしのつかないものも、いくつか作つくった。

第だい8話はちわは、そのやり方かたが最初さいしょに言葉ことばになる回かいである。

そして忘わすれてはならない。鋼はがねの翼つばさを作つくれと言いえるのは、鋼はがねを持もっている人ひとだけだ、ということも。

星図目次 ── 十章一本の星の連なり。番号の星を選ぶと該当の章へ跳ぶ。12345678910
翼の材質 ── 蝋と、まだ無い鋼 太陽へ向かう二本の矢印。片方は途切れ、片方は届く前で止まっている。 蝋溶ける鋼まだ、誰も持っていない途切れる届いていない従来の読み:挑んだことが誤りこの回の読み:条件が足りなかった一語だけ入れ替えると、教訓が反転する
図ず 01翼つばさの材質ざいしつ。誤あやまりを傲慢ごうまんに置おくか無知むちに置おくかで、結論けつろんは「挑いどむな」と「もっと良よい翼つばさを作つくれ」に分わかれる。ただし鋼はがねは、まだ誰だれも持もっていない。
補遺ほい・世よ

世よの章しょう 時代じだいの常識じょうしきと、現代げんだいの非常識ひじょうしき ── 名前なまえは、実在じつざいするか

今回こんかい外はずしてもらう常識じょうしきは、これである。「哲学てつがくの議論ぎろんは、現実げんじつとは関係かんけいない」。

第だい8話はちわの冒頭ぼうとうで、初対面しょたいめんの二人ふたりが、いきなり普遍ふへん論争ろんそう(共相之争/the problem of universals)の話はなしを始はじめる。馬うまという個体こたいは実在じつざいするが、馬うまというもの一般いっぱんは実在じつざいするのか──そういう話はなしである。

現代げんだいの目めには、鼻はなにつく衒学げんがくに見みえるかもしれない。

だが彼かれらがしているのは、身元みもとの確認かくにんである。

この論争ろんそうは、身分みぶんの話はなしだからだ。普遍ふへん(共相/universal)が実在じつざいするなら、貴族きぞく(贵族/nobility)と平民へいみんの区別くべつも、天てんと地ちの区別くべつも、神かみが定さだめた事実じじつである。普遍ふへんが名前なまえにすぎないなら、それは人間にんげんが引ひいた線せんであり、引ひき直なおせる。

そして唯名論ゆいめいろん(唯名论/nominalism)の代表だいひょうであるオッカムは、実際じっさいに教会きょうかいと衝突しょうとつし、破門はもん(绝罚/excommunication)された。

だから「オッカムを支持しじする」という一言ひとことは、思想しそうの好このみではない。危険きけんを引ひき受うける用意よういがある、という合図あいずである。

彼かれらは数十すうじゅう秒びょうで、互たがいにどこまで話はなせるかを測はかっている。

結論けつろん:第だい8話はちわを読よみ違ちがえないために外はずしておくべき現代げんだいの常識じょうしきは、「哲学てつがくの論争ろんそうは、実生活じっせいかつとは関係かんけいのない抽象論ちゅうしょうろんだ」という前提ぜんていである。十五じゅうご世紀せいきにおいて、普遍ふへん論争ろんそうは身分みぶんの問題もんだいであり、教会きょうかいの問題もんだいであり、そして「地球ちきゅうは動うごくか」を問とえるかどうかの問題もんだいだった。ヨレンタとバデーニが初対面しょたいめんで交かわす短みじかい挨拶あいさつは、雑談ざつだんではない。互たがいの思想しそう的てきな立たち位置いちを確認かくにんする、極きわめて実務じつむ的てきな手続てつづきである。

「馬うま」という語ごがある。目めの前まえにいる個々ここの馬うまは実在じつざいする。では、個々ここの馬うまを超こえた「馬うまというもの」──普遍ふへん──は、どこかに実在じつざいするのか。それとも、人間にんげんが便宜べんぎのためにつけた名前なまえにすぎないのか。

これが普遍ふへん論争ろんそうである。中世ちゅうせい哲学てつがくが数百すうひゃく年ねんをかけて争あらそった、最大さいだいの論点ろんてんの一ひとつであるC史実しじつ定説ていせつ。

抽象的ちゅうしょうてきに見みえるだろうか。だが、この問といの答こたえは、そのまま世界せかいの見みえ方かたを決きめる。

普遍ふへんが実在じつざいすると考かんがえるなら(実在論じつざいろん(实在论/realism))、世界せかいには人間にんげんの認識にんしきに先立さきだつ秩序ちつじょがあり、階級かいきゅうも種類しゅるいも神かみの定さだめた実在じつざいである。貴族きぞくと平民へいみんの区別くべつも、天てんと地ちの区別くべつも、事物じぶつの本性ほんしょうに根ねざしている。

普遍ふへんは名前なまえにすぎないと考かんがえるなら(唯名論ゆいめいろん)、実在じつざいするのは個物こぶつ(殊相/个别事物/particular)だけであり、分類ぶんるいは人間にんげんの側がわの道具どうぐになる。分類ぶんるいが道具どうぐなら、作つくり直なおせる。

だから唯名論ゆいめいろんは、危険きけんな思想しそうでもあった。オッカムのウィリアムは十四じゅうよん世紀せいきに教皇きょうこう庁ちょうから異端いたん(异端/heresy)の嫌疑けんぎを受うけ、後あとに破門はもんされている定説ていせつ。ヨレンタが「オッカムは少々しょうしょう過激かげきでは」と言いうのは、学派がくはの好このみの話はなしではない。教会きょうかいと衝突しょうとつした思想家しそうかの名なを出だしたことへの、正確せいかくな反応はんのうである。

そして第だい8話はちわの全体ぜんたいが、この論争ろんそうの実演じつえんになっている。天てんと地ちに階級かいきゅうがあるのか。それは神かみが定さだめた実在じつざいの秩序ちつじょなのか、それとも人間にんげんが引ひいた線せんなのか。バデーニが問とうているのは、まさにそれである。

現代げんだいの常識じょうしき十五じゅうご世紀せいきの常識じょうしきそうなる背景はいけい
哲学てつがくの学派がくはは、個人こじんの好このみの問題もんだいである学派がくはの選択せんたくは、教会きょうかいとの距離きょりを示しめす政治的せいじてきな表明ひょうめいである特定とくていの立場たちばは異端いたんの嫌疑けんぎに接続せつぞくされえた。オッカムは実際じっさいに教皇きょうこう庁ちょうと衝突しょうとつした
分類ぶんるいは人間にんげんが作つくった便宜べんぎである分類ぶんるいが実在じつざいするか否いなかが、数百すうひゃく年ねんの論争ろんそうの的まとである普遍ふへんが実在じつざいするなら、階級かいきゅうも種別しゅべつも神かみの定さだめた事実じじつになる。実在じつざいしないなら、作つくり直なおせるものになる
神話しんわは物語ものがたりであり、教訓きょうくんは読よみ手てが選えらぶ異教いきょうの神話しんわも、正ただしい教訓きょうくんを引ひき出だすべき素材そざいである古典こてんの権威けんいは高たかく、寓意ぐうい的てき読解どっかい(アレゴリー)が学問がくもんの標準的ひょうじゅんてきな方法ほうほうだった
傲慢ごうまんとは、自信じしん過剰かじょうのことである傲慢ごうまん(superbia)は罪源ざいげんの筆頭ひっとうであり、分ぶんを超こえることそのものを指さす存在そんざいに階級かいきゅうがある宇宙うちゅうでは、上位じょういへ手てを伸のばすこと自体じたいが秩序ちつじょへの侵犯しんぱんになる
観測かんそくデータは公開こうかいされ、検証けんしょうに供きょうされる観測かんそく記録きろく(观测记录/observational record)は所有者しょゆうしゃだけが閲覧えつらんできる資産しさんである記録きろくは写本しゃほん(手抄本/manuscript)であり稀少きしょうで、蓄積ちくせきそのものが権威けんいと収入しゅうにゅうの源泉げんせんだった
反対はんたい意見いけんの持もち主ぬしにも、データの提供ていきょうを求もとめてよい学説がくせつの対立たいりつは、しばしば人格じんかくと生涯しょうがいの否定ひていを意味いみする一人ひとりの学者がくしゃが一ひとつの体系たいけいに生涯しょうがいを捧ささげる構造こうぞうであり、体系たいけいの否定ひていは生涯しょうがいの否定ひていに等ひとしかった
才能さいのうは本人ほんにんのものである才能さいのうは神かみが与あたえたものであり、出だし惜おしむことは罪つみに接せっする賜物たまもの(恩赐/talent/gift)(タレント)を埋うめておくことへの警告けいこくが、聖書せいしょの解釈かいしゃくとして広ひろく共有きょうゆうされていた
私わたしたちは、抽象的ちゅうしょうてきな議論ぎろんと現実げんじつの権力けんりょくを切きり離はなせている──ここが現代げんだい側がわの非合理ひごうり。何なにを何なにと呼よぶか、どの範疇はんちゅうに入いれるかは、いまも人ひとの扱あつかいを決きめている。分類ぶんるいは中立ちゅうりつではない。私わたしたちは普遍ふへん論争ろんそうを過去かこの話はなしにしたが、分類ぶんるいが人ひとを作つくるという問題もんだいそのものは、名前なまえを変かえて残のこっている
普遍は、どこにあるか 実在論と唯名論の分岐。分類が実在か道具かで、階級の扱いが変わる。 「馬というもの」は、どこにあるか実在論普遍は世界の側にある階級も種別も、神の定めた事実唯名論実在するのは個物だけ分類は人間の道具道具なら、引き直せるこの立場は、教会と衝突した天と地の階級は、実在か、それとも線か
図ず 02普遍ふへんは、どこにあるか。分類ぶんるいが神かみの定さだめた実在じつざいなら従したがうほかなく、人ひとが引ひいた線せんなら引ひき直なおせる。第だい8話はちわの会話かいわは、この分岐ぶんきの上うえで交かわされる。

第だい8話はちわで、ヨレンタとバデーニは初対面しょたいめんの数十すうじゅう秒びょうで、互たがいの哲学的てつがくてき立場たちばを確認かくにんし合あう。現代げんだいの目めには、衒学的げんがくてきなやりとりに見みえるかもしれない。

だが彼かれらがしているのは、身元みもとの確認かくにんである。この相手あいてには、どこまで話はなせるか。

そして会話かいわは、フィロラオスの中心火ちゅうしんか(中央火/the central fire)から、アリスタルコスへ、そして「もし仮かりに」へと進すすんでいく。バデーニは、雑談ざつだんの顔かおをしたまま、少すこしずつ深ふかいところへ相手あいてを連つれて行いく。

その最後さいごで、彼かれは問とう。今いまのままでいたいですか、と。

この一言ひとことが、普遍ふへん論争ろんそうの実践的じっせんてきな帰結きけつである。天てんと地ちの階級かいきゅうが実在じつざいの秩序ちつじょなら、答こたえは決きまっている。だが、それが人間にんげんの引ひいた線せんにすぎないのなら──世界せかいは、今いまのままでなくてよいことになる。

私わたしたちは普遍ふへん論争ろんそうを、哲学史てつがくしの一いち章しょうとして片付かたづけた。

だが、片付かたづいたのは論争ろんそうであって、問題もんだいではない。

何なにを何なにと呼よぶか。どの範疇はんちゅうに入いれるか。それはいまも人ひとの扱あつかいを決きめている。同おなじ人ひとが、ある名前なまえで呼よばれれば保護ほごされ、別べつの名前なまえで呼よばれれば排除はいじょされる。分類ぶんるいは中立ちゅうりつではない。

第だい8話はちわで、一人ひとりの老人ろうじんが少女しょうじょに向むかって言いう。差別さべつされているな、と。そして続つづけて、あるいは妥当だとうな判断はんだんかもしれない、と。

彼かれは現象げんしょうを誤認ごにんしていない。誤認ごにんしていないまま、権威けんいある典拠てんきょを並ならべて、その現象げんしょうを正当せいとうかもしれないと述のべる。

これは分類ぶんるいの問題もんだいである。「女性じょせい」という範疇はんちゅうに、何なにが本性ほんしょうとして属ぞくしているのか。それは実在じつざいなのか、人ひとが引ひいた線せんなのか。

彼女かのじょは問とい返かえす。それは本当ほんとうに真理しんりなのですか、と。

普遍ふへん論争ろんそうは、こういう形かたちで現実げんじつに触ふれる。

分類ぶんるいが神かみの定さだめた実在じつざいなら、従したがうほかない。人ひとが引ひいた線せんなら、引ひき直なおせる。

油彩。石の広場に大きな観測用の環が組み上げられ、足場の上で人が作業している。手前で数人が紙を手に見上げている。

章扉しょうとびら ── 誤差ごさ(误差/error)のない宇宙うちゅうのために、器械きかいは大おおきくなっていった

凡例はんれい

読よみ方かた ── 八冊はっさつを貫つらぬく同おなじ作法さほうで

Layer A–D 分析フレーム 四層の帯。各層の色が、本文のバッジの色と対応する。 A 作品世界 C 史実 B 作品が用いる歴史イメージ D 現代からの評価 考察の順番 AB CD 四つの層を混ぜないこと。それがこのノート全体の作法である
図ず 03四よっつの層そうを混まぜないことが、この分析ぶんせき全体ぜんたいの作法さほうである。

本文ほんぶんの主張しゅちょうにはA作品さくひん世界せかい・B歴史れきしイメージ・C史実しじつ・D現代げんだい評価ひょうか の層そうの札ふだと、定説ていせつ有力ゆうりょく説せつ議論ぎろんあり俗説ぞくせつの確度かくどの札ふだが付つく。難度なんどは基礎きそ発展はってん大学院だいがくいんの三さん段だんで、下したの帯おびからいつでも絞しぼれる。

読よみ方かたの例れい ── C史実しじつ「この司祭しさいの説明せつめいは、当時とうじの宇宙論うちゅうろんとして正確せいかくである」定説ていせつ ── 文頭ぶんとうの札ふだがどの層そうの話はなしかを、文末ぶんまつの札ふだが学界がっかいでどれくらい確たしかかを示しめす。

第だい3章さんしょうは八節はっせつ。各節かくせつは第だい8話はちわの一行いちぎょうから始はじまり、話者わしゃと経過けいか時間じかんを添そえてある。節せつと節せつのあいだの細ほそい一行いちぎょうは、文学ぶんがく層そうの小しょう経過けいか句くである。

この頁ページの図ずには、描えがかないと決きめたものがある。決闘けっとう・斬撃ざんげき・流血りゅうけつ・遺体いたい・武器ぶき、自死じしを示唆しさする図像ずぞう、拷問ごうもんの器具きぐ、そして人ひとのかたち ── シルエットも含ふくめて描えがいていない。この回かいは人ひとの内面ないめんが主題しゅだいであり、姿すがたを与あたえると解釈かいしゃくが固かたまるためである。人ひとが要いる場所ばしょには、標ひょうや結節けっせつ点てんといった抽象ちゅうしょうの記号きごうを置おいた。

このノートは第だい8話はちわ終了しゅうりょう時点じてんまでしか扱あつかわない。移送いそうされた異端いたん者ものの氏名しめいも、終幕しゅうまくで何なにが起おきたかも、書かいていない。字幕じまく書かき起おこしから確定かくていできないことは、空欄くうらんのままにしてある。

語学ごがくの手引てびき ── 本文ほんぶんの学術がくじゅつ語ごと固有名こゆうめいには種類しゅるいごとの下線かせんを引ひいた。天文てんもんの語ごは金かね、哲学てつがく・思想しそうの語ごは青あお、宗教しゅうきょう・制度せいどの語ごは緋ひ、人物じんぶつ・地名ちめいは藤ふじ、書物しょもつは青緑あおみどり。頁ページで最初さいしょに現あらわれた場所ばしょには(中文ちゅうぶん/English)を添そえた。学術がくじゅつ語ごの一覧いちらんは付録ふろく1にある。人物じんぶつと書物しょもつの名なは初出しょしゅつの注記ちゅうきにとどめ、一覧いちらんには入いれていない ── 一覧いちらんは原稿げんこうの付録ふろくそのものだからである。中文ちゅうぶんの定訳ていやくを確認かくにんできなかった語ごは、English だけを添そえてある。作品さくひん固有こゆうの語ご(代だい闘士とうし・民間みんかん警備けいび組合くみあい・上級じょうきゅう市民しみん・下級かきゅう市民しみん)に下線かせんは引ひかない。

本文ほんぶんの主張しゅちょうには、どの層そうの話はなしかを示しめす札ふだと、学界がっかいでの位置いちを示しめす確度かくどの札ふだが付つく。読よみ方かたの見本みほんを一ひとつ置おく。

C史実しじつこの応答おうとうは、キリスト教きょう解釈学かいしゃくがく(诠释学/hermeneutics)の中核ちゅうかく的てきな区別くべつである。定説ていせつ

札ふだ=どの層そうの話はなしか/バッジ=学界がっかいでの位置いち。難度なんどは基礎きそ・発展はってん・大学院だいがくいんの三さん段だんで、下したの帯おびからいつでも絞しぼれる。

学術がくじゅつ語ごと固有名こゆうめいには種類しゅるいごとの下線かせんを引ひいた。天文てんもんの語ごは金かね、哲学てつがく・思想しそうの語ごは青あお、宗教しゅうきょう・制度せいどの語ごは緋ひ。頁ページで最初さいしょに現あらわれた場所ばしょには(中文ちゅうぶん/English)を添そえた。学がく術語じゅつごの一覧いちらんは付録ふろく1にある。中文ちゅうぶんの定訳ていやくを確認かくにんできなかった語ごは、English だけを添そえてある。作品さくひん固有こゆうの語ご(代だい闘士とうし・民間みんかん警備けいび組合くみあい・上級じょうきゅう市民しみん)に下線かせんは引ひかない。

Ⅰ

第だい1章いっしょう 第だい8話はちわで何なにが起おきたか

結論けつろん:第だい8話はちわは、四人よにんの人間にんげんが、それぞれ別べつの理由りゆうで同おなじ結論けつろんに手てを伸のばす回かいである。名前なまえを奪うばわれた少女しょうじょは自分じぶんの解答かいとうを名乗なのり、死期しきの迫せまった貴族きぞくは無謀むぼうさを説とき、左遷させん(贬谪/demotion/transfer as discipline)された修道士しゅうどうしは敵てきの資料しりょうを求もとめ、そして誰だれもが「真理しんり」という一語いちごを使つかう。ただし、その語ごが指さしているものは、四人よにんとも少すこしずつ違ちがう。

A作品さくひん世界せかい確定かくてい事項じこう(字幕じまく書かき起おこしにより裏付うらづけ。付録ふろく3に全ぜん引用いんようの経過けいか時間じかん):

  1. 掲示板けいじばんでの接触せっしょく。半日はんにちで問題もんだいを解といたのかと問とうバデーニに、ヨレンタは自分じぶんは解答かいとう者しゃではないと否定ひていする。解答かいとうが男性名だんせいめいであることを指さし示しめし、自分じぶんは図書館としょかんの雑用ざつよう係かかりで、職場しょくばの主人しゅじんに頼たのまれただけだ、と。主人しゅじんに会あわせてほしいと求もとめられ、当分とうぶん留守るすだと答こたえる。バデーニは伝言でんごんを伝つたえたいので伺うかがいたいと申もうし出でる。
  2. 自己じこ紹介しょうかいと普遍ふへん論争ろんそう。オクジーが名乗なのり、バデーニは自分じぶんを中央ちゅうおう修道院しゅうどういん(修道院/monastery)から今いまは村むらの副ふく助祭じょさい(副助祭/subdeacon)だと紹介しょうかいする。ヨレンタは驚おどろき、普遍ふへん論争ろんそうではどちらの立場たちばかと問とう。バデーニは唯名論ゆいめいろんであり、アベラールを支持しじすると答こたえる。ヨレンタは自分じぶん(と言いいかけて主人しゅじん)も唯名論ゆいめいろんでオッカムを支持しじしていると述のべ、バデーニが「オッカムは少々しょうしょう過激かげきでは」と応おうじると、真理しんりの探究たんきゅうにはある種しゅの大胆だいたんさが不可欠ふかけつだと答こたえる。バデーニは勇敢ゆうかんだと評ひょうす。
  3. バデーニの計算けいさん。オクジーとの内緒話ないしょばなしで、バデーニは彼女かのじょが解答かいとう者しゃだと見抜みぬいていると述のべる。優すぐれた人材じんざいであり、何なによりよいのは密告みっこく(告发/denunciation)される可能性かのうせいが低ひくいことだ、と。理由りゆうは女性じょせいだからである──密告みっこくすれば自分自身じぶんじしんが魔女まじょ扱あつかいされる可能性かのうせいが非常ひじょうに高たかいから、と。酷こくだと言いうオクジーに、それが現実げんじつだ、ただしあくまで男性だんせいと比くらべたら都合つごうがよいだけだ、と答こたえる。本当ほんとうに話はなすかは慎重しんちょうに見極みきわめよう、と結むすぶ。
  4. 古代こだい宇宙論うちゅうろんの会話かいわ。バデーニは天文てんもんの面白おもしろさを語かたり、ヘラクレイデスとフィロラオスを知しっているかと問とう。ヨレンタは知しっていると答こたえ、フィロラオスの説せつをバカげた仮説かせつと呼よぶ。バデーニはその内容ないようを述のべる──宇宙うちゅうの中心ちゅうしんに中心火ちゅうしんかがあり、人類じんるいはその火ひが見みえない片側かたがわだけに住すみ、その火ひの周まわりを地球ちきゅうも太陽たいようも動うごく、と。ヨレンタは信仰しんこう的てきに大丈夫だいじょうぶかと不安ふあんがるが、バデーニは自分じぶんは教会きょうかいの者ものだと安心あんしんさせる。
  5. 正統せいとうの再さい確認かくにん。ヨレンタは、宇宙うちゅうの形かたちを変かえて大地だいちを動うごかそうなど無謀むぼうだと述のべ、地球ちきゅうが宇宙うちゅうの中心ちゅうしんにはりつけになっているのは神かみが意図的いとてきにしたことだと語かたる。原罪げんざい(原罪/original sin)を背負せおった我々われわれの宿命しゅくめいであり、この世よが不幸ふこうな根拠こんきょである、と。
  6. アリスタルコス。バデーニはアリスタルコスを紹介しょうかいする。フィロラオスのような主観的しゅかんてきな思想しそうではなく、観測かんそく的てき事実じじつを基もとに仮説かせつを立たてた者ものだと。ヨレンタが本題ほんだいを求もとめると、バデーニはもう本題ほんだいに入はいっていると答こたえる。
  7. 「もし仮かりに」。バデーニは仮定かていを重かさねる。あのバカげた仮説かせつが広ひろまったらどうなるか。ヨレンタは、大だい混乱こんらんであり、権威けんいも前提ぜんていも崩くずれ、世界せかいは今いまのままでいられなくなる、と答こたえる。バデーニは問とう──今いまのままでいたいですか、と。そして続つづける。我々われわれが生うまれながらに罪つみだけでなく自由じゆうも持もっているとしたら。今いま従したがっていること、信しんじているもの、見みている現実げんじつの多おおくが嘘うそだったら、と。ありえない、常識的じょうしきてきに考かんがえて、と返かえすヨレンタに、彼かれは言いう。常識じょうしきの中なかでは、そうだ。ではバカげた仮説かせつの中なかなら、と。
  8. 開示かいじ。バデーニは告つげる──この世界せかいは本当ほんとうに動うごいているとしたらどうだ、と。そこでは神かみは宇宙うちゅうに階級かいきゅうなど創つくっておらず、強しいられた不幸ふこうを耐たえる根拠こんきょなどない、と。ヨレンタは不適切ふてきせつだと制止せいしする。バデーニは、そのとおり不適切ふてきせつだと認みとめ、我々われわれは正ただしい方向ほうこうになど導みちびかない、目指めざすのはただ一ひとつ──真理しんりだ、と答こたえる。ヨレンタは引ひき取とりを求もとめる。バデーニは、解答かいとう者しゃに伝言でんごんを、昼ひるどきに掲示板けいじばん前まえで待まっていると伝つたえるよう言いい残のこす。
  9. 見極みきわめの根拠こんきょ。大丈夫だいじょうぶかと問とうオクジーに、バデーニはあの顔かおを見みれば分わかると答こたえる。女性じょせいだからかと問とわれ、いや──研究者けんきゅうしゃだからだ、と答こたえる。
  10. ヨレンタの動揺どうよう。恐おそろしい、本気ほんきで研究けんきゅうするなんて、と彼女かのじょは思おもう。自分じぶんも異教徒いきょうとの考かんがえに興味きょうみは持もったが、実践じっせんするのは罪つみの重おもみが違ちがう、と。コルベに報告ほうこくしなければ、異端いたんと関かかわったことで自分じぶんまで魔女まじょ扱あつかいされるかもしれない、それでも言いわなければ、神かみはこんなことをお許ゆるしにならない、と考かんがえる。
  11. ピャストの演説えんぜつ。研究会けんきゅうかいの場ばで、ピャストは自分じぶんがもうじき死しぬと告つげる。だが天国てんごくへ行いく前まえに何なにとしても我々われわれの宇宙論うちゅうろんを完成かんせいさせねばならない、と。今いま、人類じんるいはプトレマイオスの宇宙うちゅうを受うけ入いれており、日常的にちじょうてきには大たいした問題もんだいはない。だが大衆たいしゅうが納得なっとくしようと、我々われわれだけは真理しんりの探究たんきゅうを諦あきらめてはならない。あれは真理しんりとは思おもえない、と。
  12. イカロスの再さい解釈かいしゃく。彼かれは異教徒いきょうとの神話しんわのイカロスを引ひく。蝋ろうの翼つばさで太陽たいようを目指めざし墜落ついらくした者ものである。彼かれの誤あやまりは太陽たいように挑いどんだ傲慢ごうまんさではない。蝋ろうが溶とけるという父ちちの警告けいこくを軽かろんじた無知むちにある、と。我々われわれは蝋ろうで駄目だめなら鋼はがねの翼つばさを作つくり、太陽たいようという名なの真理しんりへ挑いどみ続つづける。今いまあと一歩いっぽ足たりていないのは、その無謀むぼうさだ。真しんの宇宙うちゅうを完成かんせいさせるため──イカロスにならねば、と。
  13. ピャストとヨレンタ。盗ぬすみ聞ぎきしていたヨレンタをピャストが見みつける。研究職けんきゅうしょく志望しぼうだったろう、なぜ研究会けんきゅうかいに参加さんかしない、成果せいかがないなら解雇かいこする、と迫せまる。参加さんかを許可きょかしてもらえないと答こたえるヨレンタに、女おんなだからか、差別さべつされているな、と述のべ、続つづけて──あるいは妥当だとうな判断はんだんか、と言いう。悪魔あくまが取とりつくのは女性じょせいが多おおいという論文ろんぶんを読よんだことがある、聖書せいしょには女おんなは黙だまって学まなぶべきで教おしえるべきではないと取とれる箇所かしょもある、だとしたら女性じょせいは元来がんらい、議論ぎろんや研究けんきゅう発表はっぴょうには向むいていないとも言いえる、と。
  14. 問とい返かえし。ヨレンタは問とう──それは本当ほんとうに、真理しんりなのでしょうか、と。ピャストは答こたえる。聖書せいしょは真理しんりだ、と。ヨレンタが同意どういすると、彼かれは続つづける──だが、今いまの我々われわれに正ただしい読よみ方かたができているかは分わからない、と。そして告つげる。今後こんご、見みせたい論文ろんぶんがあったら持もってこい、コルベではなく私わたしにな、退屈たいくつだったら許ゆるさん、と。
  15. 名乗なのり。掲示板けいじばん前まえに現あらわれたヨレンタに、バデーニは主人しゅじんは何なにと言いったかと問とう。彼女かのじょは答こたえる──主人しゅじんはいません、と。ではこの解答かいとうはと問とわれ──私わたしのものです、と。バデーニは協力きょうりょくを求もとめ、彼女かのじょは承諾しょうだくする。
  16. 条件じょうけんと提案ていあん。ヨレンタは断ことわりを入いれる。自分じぶんは天体てんたいの資料しりょうを自由じゆうに閲覧えつらんできる立場たちばではなく、あの問題もんだいは勝手かってに閲覧えつらんして解といた、と。ただし天文てんもんの研究所けんきゅうしょに籍せきはあるので協力者きょうりょくしゃを紹介しょうかいできるかもしれない、と。誰だれかと問とわれ──ピャスト伯はくです、と答こたえる。
  17. バデーニの拒絶きょぜつと再考さいこう。バデーニは即座そくざに帰かえると言いい、この件けんは全すべてなかったことにしてほしいと告つげる。ヨレンタは、あの方ほうならあらゆる資料しりょうを閲覧えつらんでき、味方みかたにつければこれ以上いじょうなく強つよいと主張しゅちょうする。バデーニは説明せつめいする──天文てんもんでピャストといえば一人ひとりしかいない、今いまの天動説てんどうせつ(地心说/geocentrism)を超こえる完璧かんぺきな天動説てんどうせつの証明しょうめいに人生じんせいを捧ささげている貴族きぞくだ、と。ヨレンタは、ピャスト伯はくは五十年ごじゅうねんにわたる詳細しょうさいな観測かんそく記録きろくを持もっており、この機きを逃のがしたら地動説ちどうせつ(日心说/heliocentrism)から大おおきく遠とおざかる、と述のべる。無謀むぼうすぎると言いうバデーニに、彼女かのじょは返かえす──大地だいちを動うごかす無謀むぼうさに比くらべたら、ささいなことでは、と。そして、ピャスト伯はくは誰だれよりも天動説てんどうせつを重おもんじているが、きっとそれよりも真理しんりを重おもんじている、と。バデーニは承諾しょうだくする。
  18. バデーニの保険ほけん。危あぶないのではと言いうオクジーに、バデーニは大丈夫だいじょうぶだと答こたえる。もし捕つかまっても、魔女まじょにだまされたと密告みっこくする、自分じぶんの知識ちしきを総動員そうどういんすれば大方おおかたの罪つみをなすりつけられるだろう、むしろ好都合こうつごうな提案ていあんかもしれない、と。
  19. ピャストとの対面たいめん。バデーニは本題ほんだいを述のべる。我々われわれは少すこし前まえからある研究けんきゅうをしており、アリスタルコスを引ひき継つぐものである、と。研究けんきゅうを完成かんせいさせるため観測かんそく記録きろくを貸かしてほしい、と。加くわえてオクジーはとてもいい目めを持もっており、かつてピャスト伯はくもその目めで名なをはせた、観測かんそくが不便ふべんであればいつでも使つかってほしい、と申もうし出でる。ピャストは帰かえれと言いう。その話はなしは教会きょうかいが認みとめる宇宙うちゅうと異ことなっており、加くわえて──私わたしの人生じんせいを懸かけた研究けんきゅうが間違まちがいだと主張しゅちょうするものだぞ、と。バデーニは認みとめた上うえで答こたえる──ですが、真理しんりかもしれません。それを求もとめて人生じんせいを捧ささげたのでしょう、と。ピャストは再ふたたび、帰かえれ、と言いう。
  20. ピャストの回想かいそう。若わかき日ひのピャストは、父ちちから、ピャスト家けに生うまれながら下等かとうな天文てんもんなど学まなぶのかと叱責しっせきされる。もう帰かえってこなくていい、夜空よぞらを眺ながめて歴史れきしを変かえられるとでも、お前まえは一族いちぞくの恥はじだ、と。
  21. 教授きょうじゅとの出会であい。若わかきピャストは、一族いちぞくの遠縁とおえんにあたる教授きょうじゅの巨大きょだいな施設しせつを訪たずねる。金属きんぞくのアストロラーベ(星盘/astrolabe)を見みて驚おどろく彼かれに、教授きょうじゅは異教徒いきょうとの知恵ちえを借かりて秘密裏ひみつりに職人しょくにんに作つくらせた一点いってん物ぶつだと語かたる。教授きょうじゅは問とう──学術がくじゅつ発展はってんにあたって何なにが重要じゅうようだと思おもうか、と。ピャストは答こたえる──無謀むぼうさです。慎重しんちょうさを要ようする研究けんきゅうという分野ぶんやにおいてこそ、その一歩いっぽ目めは大胆だいたんに踏ふみ出だすべきだ、と。教授きょうじゅは気きに入はいり、天文てんもんに大だい反対はんたいされただろう、彼かれらの利きかぬ鼻はななどつまませておけ、所詮しょせんただの金持かねもちで真しんの貴族きぞくではない、我々われわれは金かねの適切てきせつな使つかい方かたを分わかっている、と語かたる。
  22. 宇宙うちゅうの完成かんせい。何なにの研究けんきゅうをしているのかと問とわれ、教授きょうじゅは答こたえる──宇宙うちゅうの完成かんせいだよ、と。現状げんじょうの宇宙うちゅうには誤差ごさがある、神かみが創つくった世界せかいにだ、大衆たいしゅうが納得なっとくしようが自分じぶんには許ゆるせない、だから修正しゅうせいして完成かんせいさせる、私わたしが一人ひとりでだ、と。ここにある膨大ぼうだいな記録きろくは自分じぶんだけが閲覧えつらんでき、じき自分じぶんは真理しんりにたどり着つく、と。
  23. アストロラーベの譲渡じょうと。教授きょうじゅはピャストの能力のうりょくを問とい、遠目とおめが利きくと聞きいて記録きろくを見みせさせる。そして金属きんぞくアストロラーベを与あたえる──優すぐれた道具どうぐは、優すぐれた能力のうりょくの人間にんげんに使つかわれるべきだ、と。神かみが君きみに与あたえた才能さいのうを出だし惜おしむな、思おもう存分ぞんぶん天文てんもんをやれ、君きみを否定ひていした節穴ふしあなどもに分わからせてやれ、君きみが夜空よぞらを眺ながめれば歴史れきしが変かわると、君きみこそが一族いちぞくの誇ほこりであると、と語かたる。
  24. 現在げんざい。老おいたピャストは呟つぶやく──宇宙うちゅうを完成かんせいさせねば、と。ここで第だい8話はちわは終おわる。

省略しょうりゃくされた文脈ぶんみゃくの開示かいじ①(D6 §2.7)——なぜバデーニとヨレンタは、初対面しょたいめんで普遍ふへん論争ろんそうの立場たちばを尋たずね合あうのか。この時代じだい、学派がくはの選択せんたくは個人こじんの趣味しゅみではなく、教会きょうかいとの距離きょりを示しめす表明ひょうめいである。唯名論ゆいめいろんの代表だいひょうであるオッカムは十四じゅうよん世紀せいきに教皇きょうこう庁ちょうと衝突しょうとつし、異端いたんの嫌疑けんぎを受うけて破門はもんされた定説ていせつ。したがって「オッカムを支持しじする」と述のべることは、多少たしょうの危険きけんを引ひき受うける用意よういがあるという合図あいずになる。この一段いちだんを外はずすと、二人ふたりのやりとりが単たんなる衒学げんがくに見みえる。実際じっさいには、身元みもとの確認かくにんであり、どこまで話はなせるかの相互そうご測定そくていである。

四人よにんが同おなじ語ごを使つかう。そして四人よにんとも、別べつのものを指さしている。

起おきたことを並ならべ終おえて気きづくのは、この回かいに会話かいわが多おおいことだ。掲示板けいじばんで、応接間おうせつまで、研究会けんきゅうかいで、教授きょうじゅ室しつで。誰だれも観測かんそくをしていない。誰だれも計算けいさんをしていない。ただ話はなしている。だから第だい8話はちわの問といは、行為こういではなく、言葉ことばと態度たいどに向むかう。

Ⅱ

第だい2章にしょう この話はなしで提示ていじされた問とい

結論けつろん:第だい7話ななわが「名前なまえとは何なにか」を問とうたなら、第だい8話はちわは「無謀むぼうとは何なにか」を問とう。少すくなくとも12問じゅうにもん。

  1. 分類ぶんるいは、世界せかいに実在じつざいするのか、それとも人間にんげんが引ひいた線せんなのか。
  2. 線せんが人間にんげんの引ひいたものなら、天てんと地ちの階級かいきゅうも引ひき直なおせるのか。
  3. 「今いまのままでいたいですか」という問といは、なぜこれほど危険きけんなのか。
  4. 無謀むぼうさは、学問がくもんに必要ひつようなのか。必要ひつようだとすれば、どこまでが必要ひつようで、どこからが破滅はめつなのか。
  5. イカロスの誤あやまりは、傲慢ごうまんだったのか、無知むちだったのか。読よみ替かえることに、何なにの意味いみがあるのか。
  6. 生涯しょうがいを捧ささげた説せつが間違まちがいだと言いわれたとき、人ひとは何なにを守まもるべきなのか。説とか、それとも捧ささげた理由りゆうか。
  7. 聖書せいしょが真理しんりであることと、私わたしたちが正ただしく読よめていることは、同おなじことなのか。
  8. 差別さべつされている、と言いった同おなじ口くちが、あるいは妥当だとうかもしれない、と続つづけるとき、その人ひとは何なにをしているのか。
  9. 敵対てきたいする立場たちばの資料しりょうを求もとめることは、恥はじなのか、それとも探究たんきゅうの当然とうぜんの手続てつづきなのか。
  10. 味方みかたにつけるために、誰だれかを盾たてにする計画けいかくは、どこから許ゆるされなくなるのか。
  11. 記録きろくを独占どくせんする者ものと、記録きろくを奪うばわれた者ものは、同おなじ言葉ことばを使つかえるのか。
  12. 四人よにんが同おなじ「真理しんり」という語ごを使つかうとき、彼かれらは同おなじものを指さしているのか。

第だい7話ななわは「名前なまえとは何なにか」を問とうた。第だい8話はちわは「無謀むぼうとは何なにか」を問とう。

十二じゅうにの問といは、どれも一語いちごの周まわりを回まわっている。無謀むぼう。挑いどむべきか、退しりぞくべきか、その線せんはどこにあるのか。八やっつの短みじかい言葉ことばから辿たどり直なおす。

Ⅲ

第だい3章さんしょう 名場面めいばめんの解剖かいぼう

結論けつろん:第だい8話はちわの台詞せりふは、普遍ふへん論争ろんそう・無謀むぼうさ・真理しんりという三みっつの主題しゅだいを通とおって、対立たいりつする二人ふたりが同おなじ一語いちごを使つかうところへ到達とうたつする。八やっつの短たん句くを解剖かいぼうする。

3-1

唯名論ゆいめいろんです アベラールを支持しじします
── 第だい8話はちわ バデーニ 03:07

A作品さくひん世界せかい初対面しょたいめんの自己じこ紹介しょうかいの直後ちょくご、ヨレンタが普遍ふへん論争ろんそうの立場たちばを尋たずね、バデーニがこう答こたえる。ヨレンタは自分じぶん(の主人しゅじん)はオッカムを支持しじしていると述のべ、バデーニは「オッカムは少々しょうしょう過激かげきでは」と応おうじる(03:17)。C史実しじつこの短みじかいやりとりは、中世ちゅうせい哲学てつがくの地形ちけいを正確せいかくになぞっている。 普遍ふへん論争ろんそうは、種しゅや類るいといった普遍ふへんが実在じつざいするか、名前なまえにすぎないかをめぐる論争ろんそうであり、中世ちゅうせいを通つうじて中心ちゅうしん的てきな問題もんだいであり続つづけた定説ていせつ。ピエール・アベラール(十二じゅうに世紀せいき)はこの論争ろんそうの主要しゅような担にない手てであり、ウィリアム・オブ・オッカム(十四じゅうよん世紀せいき)は唯名論ゆいめいろんの代表だいひょうとされる定説ていせつ。オッカムは教皇きょうこう庁ちょうと衝突しょうとつし、異端いたんの嫌疑けんぎを受うけて破門はもんされた定説ていせつ。したがって「少々しょうしょう過激かげき」という評ひょうは、思想しそうの内容ないようと、その社会的しゃかいてき帰結きけつの両方りょうほうを指さしている。D現代げんだい評価ひょうか確度かくどの注記ちゅうき:アベラールを唯名論ゆいめいろん者ものに分類ぶんるいすることには、学説がくせつ上じょうの議論ぎろんがある。現代げんだいの分類ぶんるいでは概念論がいねんろん(概念论/conceptualism)(conceptualism)とされることが多おおく、普遍ふへんは事物じぶつにも純粋じゅんすいな音声おんせいにもなく、概念がいねんとして成立せいりつするという立場たちばである議論ぎろんあり。ただし中世ちゅうせいの論争ろんそう史しでは、彼かれを nominales の系譜けいふの祖そとする理解りかいも存在そんざいした有力ゆうりょく説せつ。作中さくちゅうの分類ぶんるいは、当時とうじの陣営じんえい分わけとしては成立せいりつする。D現代げんだい評価ひょうかそしてこの論争ろんそうが、本作ほんさくの主題しゅだいと直結ちょっけつしている。普遍ふへんが実在じつざいするなら、天てんと地ちの階級かいきゅうも、貴族きぞくと平民へいみんの区別くべつも、神かみの定さだめた事実じじつである。普遍ふへんが名前なまえにすぎないなら、分類ぶんるいは人間にんげんの道具どうぐであり、引ひき直なおせる。バデーニが後あとに「神かみは宇宙うちゅうに階級かいきゅうなど創つくっていない」と言いう(08:52)とき、彼かれは唯名論ゆいめいろん者ものとしての結論けつろんを述のべている。

立場たちばを確たしかめ合あった直後ちょくご、片方かたほうはもう、相手あいての弱よわさを計算けいさんに入いれていた。

3-2

それが現実げんじつだ
── 第だい8話はちわ バデーニ 04:21

A作品さくひん世界せかいヨレンタに話はなしてよい理由りゆうとして、バデーニは女性じょせいであることを挙あげる(04:10)。密告みっこくすれば自分じぶんが魔女まじょとされうるから、彼女かのじょは告発こくはつしにくい、と。酷こくだと言いうオクジーに、それが現実げんじつだ、ただし男性だんせいと比くらべたら都合つごうがよいだけだ、と答こたえる。C史実しじつこの計算けいさんは、当時とうじの告発こくはつ構造こうぞうの把握はあくとして正確せいかくである。第だい7話ななわで扱あつかったとおり、女性じょせいへの嫌疑けんぎは『魔女まじょに与あたえる鉄槌てっつい』(《女巫之锤》/Malleus Maleficarum)以降いこう、体系的たいけいてきな理論りろんを持もった定説ていせつ。異端いたんとの接触せっしょくを申告しんこくすることは、自分じぶんの関与かんよを明あかすことでもある。D現代げんだい評価ひょうかこの場面ばめんが重要じゅうようなのは、バデーニが第だい7話ななわのコルベと同おなじ事実じじつを、正反対せいはんたいの目的もくてきで使つかっていることである。コルベは「女性じょせいの名なでは読よまれない」という事実じじつを、彼女かのじょを守まもるために使つかった。バデーニは「女性じょせいは密告みっこくできない」という事実じじつを、彼女かのじょを使つかうために使つかう。D現代げんだい評価ひょうか同おなじ構造的こうぞうてきな弱よわさが、庇護ひごの根拠こんきょにも、利用りようの根拠こんきょにもなる。第だい7話ななわノートで「善意ぜんいによる剥奪はくだつ」を扱あつかったが(E7 3-8節はっせつ)、第だい8話はちわはその裏面りめんを示しめす──悪意あくいなき利用りようである。バデーニは彼女かのじょを軽かろんじていない。むしろ能力のうりょくを高たかく評価ひょうかしている。それでも、彼女かのじょの弱よわい立場たちばを計算けいさんに入いれている。この二ふたつは両立りょうりつする。

同じ弱さ、二つの使い道 一つの社会的事実が、庇護の根拠にも、利用の根拠にもなる。 同じ社会的な弱さ庇護の根拠読まれないから、名を外す第七話利用の根拠密告できないから、話せる第八話守る側と使う側が、同じ事実に立っている
図ず 04同おなじ弱よわさ、二ふたつの使つかい道みち。前まえの回かいは守まもるために、この回かいは使つかうために、同おなじ事実じじつが持もち出だされる。

安全あんぜんを確認かくにんした男おとこは、雑談ざつだんの顔かおのまま、少すこしずつ深ふかいところへ相手あいてを連つれて行いく。

3-3

今いまのままでいたいですか?
── 第だい8話はちわ バデーニ 08:03

A作品さくひん世界せかいバカげた仮説かせつが広ひろまれば世界せかいは今いまのままでいられなくなる、というヨレンタの答こたえを受うけて、バデーニがこう問とい返かえす。そして続つづける──我々われわれが生うまれながらに罪つみだけでなく自由じゆうも持もっているとしたら(08:12)、と。D現代げんだい評価ひょうかこの一問いちもんが、第だい8話はちわの思想しそう的てきな中心ちゅうしんである。 直前ちょくぜんまでの会話かいわは、すべて事実じじつの確認かくにんだった。誰だれが何なにを唱となえたか、それが広ひろまればどうなるか。ここで質問しつもんの種類しゅるいが変かわる。事実じじつから、欲望よくぼうへ。C史実しじつそして「罪つみだけでなく自由じゆうも」という定式ていしきは、当時とうじの正統的せいとうてきな人間にんげん観かんへの正面しょうめんからの挑戦ちょうせんである。原罪げんざいの教理きょうりにおいては、人間にんげんは堕落だらくした状態じょうたいで生うまれ、その帰結きけつとして現世げんせの労苦ろうくと死しを負おう定説ていせつ。ヨレンタが直前ちょくぜんに述のべた「地球ちきゅうが宇宙うちゅうの中心ちゅうしんにはりつけになっているのは神かみが意図的いとてきにしたこと」「原罪げんざいを背負せおった我々われわれの宿命しゅくめい」(06:35、06:43)は、この人間にんげん観かんと宇宙論うちゅうろんが一体いったいであることを正確せいかくに示しめしている〔E4 世よの章しょうと接続せつぞく〕。D現代げんだい評価ひょうかしたがってバデーニの問といは、天文学てんもんがくの問といではない。宇宙うちゅうの構造こうぞうが人間にんげんの身分みぶんを規定きていしているという体系たいけい全体ぜんたいに、別べつの可能性かのうせいを差さし込こむ問といである。地球ちきゅうが動うごくなら、階級かいきゅうはない。階級かいきゅうがないなら、耐たえる根拠こんきょもない。彼かれはこの推論すいろんを三さん段だんで述のべ(08:44、08:52、08:57)、そして相手あいてが拒絶きょぜつするまで止とめない。

もし仮に ── 五段の階段 事実の確認から始まり、三段目で質問の種類が変わる。 事実の確認:誰が何を唱えたか帰結の確認:広まれば、権威も前提も崩れる今のままでいたいですか仮定:罪だけでなく、自由も持っているとしたらこの世界は、動いているとしたらここで質問の種類が変わる事実から、欲望へ
図ず 05もし仮かりに。三さん段だん目めまでは事実じじつの確認かくにんである。そこで質問しつもんの種類しゅるいが変かわり、事実じじつから欲望よくぼうへ移うつる。

拒絶きょぜつされた男おとこは、それでも彼女かのじょは密告みっこくしないと言いう。理由りゆうは、性別せいべつではなかった。

3-4

研究者けんきゅうしゃだからだ
── 第だい8話はちわ バデーニ 09:55

A作品さくひん世界せかい彼女かのじょは密告みっこくしないと言いい切きる根拠こんきょを問とわれ、女性じょせいだからかと聞きかれたバデーニは、これを否定ひていしてこう答こたえる。D現代げんだい評価ひょうかこの一言ひとことは、3-2節にせつの計算けいさんを上書うわがきする。 直前ちょくぜんまで彼かれは、彼女かのじょの性別せいべつを安全あんぜん装置そうちとして計算けいさんしていた。だが実際じっさいに会話かいわした後あと、彼かれが挙あげる根拠こんきょは変かわっている。属性ぞくせいではなく、態度たいどである。D現代げんだい評価ひょうか何なにを見みてそう判断はんだんしたのか。作中さくちゅうで明示めいじされるのは「あの顔かお」だけである。だが会話かいわを追おえば推測すいそくはつく──彼女かのじょは不適切ふてきせつだと制止せいししながら、最後さいごまで聞きいていた。恐おそろしいと感かんじながら、内容ないようを理解りかいしていた。危険きけんを認識にんしきしつつ、理解りかいを止とめられない人間にんげんを、彼かれは研究者けんきゅうしゃと呼よんでいる。D現代げんだい評価ひょうかこの定義ていぎは、シリーズの他ほかの人物じんぶつにも当あてはまる。第だい1話いちわのラファウ、第だい4話よんわのグラス、第だい6話ろくわのバデーニ自身じしん。そして第だい7話ななわの終おわりで、名前なまえを奪うばわれた少女しょうじょが「悪わるいとかどうでもいいから答こたえが気きになる」と言いったこと(E7 10章じっしょう)とも重かさなる。研究者けんきゅうしゃとは、資格しかくでも職しょくでもなく、止とまれないことの名前なまえである、というのが第だい8話はちわの含意がんいである。

同おなじころ、別べつの部屋へやでは、死期しきの迫せまった老人ろうじんが古ふるい神話しんわを読よみ替かえていた。

3-5

彼かれの誤あやまりは 太陽たいように挑いどんだ傲慢ごうまんさではない
── 第だい8話はちわ ピャスト 11:53

A作品さくひん世界せかいピャストはイカロスの神話しんわを引ひき、その誤あやまりを傲慢ごうまんではなく無知むちに置おき換かえる。そして、蝋ろうで駄目だめなら鋼はがねの翼つばさを作つくる、と続つづける(12:03)。C史実しじつこの読よみ替かえは、伝統でんとうへの意図的いとてきな反転はんてんである。 イカロスの物語ものがたりはオウィディウス『変身へんしん物語ものがたり』第だい8巻はっかんに伝つたわり、中世ちゅうせいを通つうじて寓意ぐうい的てきに読よまれてきた。標準的ひょうじゅんてきな読解どっかいは、分ぶんを超こえて上昇じょうしょうしようとする傲慢ごうまん(superbia)への戒いましめである定説ていせつ。傲慢ごうまんは罪源ざいげんの筆頭ひっとうであり、存在そんざいに階級かいきゅうのある宇宙うちゅうでは、上位じょういへ手てを伸のばすこと自体じたいが秩序ちつじょへの侵犯しんぱんだった〔E6 3-2節にせつ〕。D現代げんだい評価ひょうかピャストはこの寓意ぐういを、技術的ぎじゅつてき失敗しっぱいの物語ものがたりへ書かき換かえる。挑いどんだことが誤あやまりなのではない。装備そうびが足たりなかったことが誤あやまりなのだ、と。この読よみ替かえによって、教訓きょうくんは「挑いどむな」から「もっと良よい翼つばさを作つくれ」へ反転はんてんする。D現代げんだい評価ひょうか思想史しそうし的てきに見みれば、これは近代きんだい科学かがくの姿勢しせいの先取さきどりである。自然しぜんの限界げんかいを道徳的どうとくてきな境界きょうかいとしてではなく、技術的ぎじゅつてきに更新こうしん可能かのうな条件じょうけんとして扱あつかうこと。ただし本ほんノートは、ここに直線ちょくせん的てきな系譜けいふを引ひかない。同おなじ姿勢しせいが、制御せいぎょ不能ふのうな破壊はかいにも接続せつぞくしてきたことは、二十にじゅう世紀せいきが示しめしている議論ぎろんあり──評価ひょうかは分わかれる。C史実しじつなお、原典げんてんの父ちちダイダロスの警告けいこくは「高たかく飛とびすぎるな、低ひくく飛とびすぎるな」であり、中庸ちゅうようの教おしえという側面そくめんも持もつ定説ていせつ。ピャストは警告けいこくの内容ないようを「蝋ろうが溶とける」という物理的ぶつりてき事実じじつに絞しぼって引用いんようしており、中庸ちゅうようの含ふくみを落おとしている。この省略しょうりゃくが、彼かれの解釈かいしゃくを成立せいりつさせている。

教訓が反転する 誤りをどこに置くかで、結論が反転する。入れ替わるのは一語である。 誤りは、傲慢にある→ 挑むな標準的な読解誤りは、無知にある→ より良い翼を作れこの回の読み替え入れ替わったのは一語だけ原典の警告には、中庸の含みもある。この読み替えは、それを落とすことで成立する
図ず 06教訓きょうくんが反転はんてんする。傲慢ごうまんを無知むちに置おき替かえると、挑いどむなが、もっと良よい翼つばさを作つくれに変かわる。

鋼はがねの翼つばさを説といた同おなじ口くちが、数分すうふん後ご、一人ひとりの少女しょうじょの前まえで別べつの権威けんいを持もち出だす。

3-6

“女おんなは黙だまって学まなぶべきで 教おしえるべきではない”
── 第だい8話はちわ ピャスト 13:31

A作品さくひん世界せかいヨレンタの排除はいじょについて、ピャストはまず「差別さべつされているな」と言いい、続つづけて「あるいは妥当だとうな判断はんだんか」と述のべる。根拠こんきょとして、悪魔あくまが取とりつくのは女性じょせいが多おおいという論文ろんぶんと、聖書せいしょのこの箇所かしょを挙あげる。C史実しじつ典拠てんきょは、テモテへの第一だいいちの手紙てがみ2章にしょう11節じゅういっせつから12節じゅうにせつにあたる記述きじゅつである。この箇所かしょは、女性じょせいの教職きょうしょくからの排除はいじょを正当化せいとうかする根拠こんきょとして長ながく用もちいられてきた定説ていせつ。「悪魔あくまが取とりつくのは女性じょせいが多おおいという論文ろんぶん」は、『魔女まじょに与あたえる鉄槌てっつい』の主張しゅちょうに対応たいおうする定説ていせつ。D現代げんだい評価ひょうか注目ちゅうもくすべきは、ピャストが「差別さべつされている」と正ただしく名指なざした直後ちょくごに、それを正当化せいとうかしうる根拠こんきょを並ならべることである。 彼かれは現象げんしょうを誤認ごにんしていない。誤認ごにんしていないまま、権威けんいある典拠てんきょによって、その現象げんしょうを妥当だとうかもしれないと述のべる。D現代げんだい評価ひょうか第だい7話ななわの所員しょいんは理由りゆうを名指なざさなかった(E7 3-1節いっせつ)。ピャストは名指なざす。そして名指なざした上うえで、正当化せいとうかを試こころみる。排除はいじょの言語化げんごかとしては、後者こうしゃのほうが率直そっちょくであり、そして反論はんろん可能かのうである。 実際じっさい、ヨレンタは反論はんろんする。名指なざされない排除はいじょには反論はんろんできないが、典拠てんきょを挙あげられた排除はいじょには、典拠てんきょの読よみ方かたを問とうことができる。

正当化せいとうかの根拠こんきょを並ならべられた少女しょうじょは、根拠こんきょそのものではなく、その読よみ方かたを問とい返かえした。

3-7

今いまの我々われわれに 正ただしい読よみ方かたができているかは分わからない
── 第だい8話はちわ ピャスト 14:01

A作品さくひん世界せかいヨレンタの問といに、ピャストはまず「聖書せいしょは真理しんりだ」と答こたえる(13:54)。彼女かのじょが同意どういした上うえで、彼かれはこう続つづける。C史実しじつこの応答おうとうは、キリスト教きょう解釈学かいしゃくがくの中核ちゅうかく的てきな区別くべつである。 聖書せいしょが真理しんりであることと、人間にんげんの解釈かいしゃくが正ただしいことは、別べつの命題めいだいである。アウグスティヌスは『創世記そうせいき逐語ちくご解かい』において、確実かくじつな自然しぜん認識にんしきと聖書せいしょ解釈かいしゃくが衝突しょうとつして見みえる場合ばあい、解釈かいしゃくの側がわを再検討さいけんとうすべきだと論ろんじた定説ていせつ〔E1 第だい7章ななしょう、E2 3-4節よんせつと接続せつぞく〕。この区別くべつが、後あとにガリレオの弁明べんめいの中軸ちゅうじくにもなる定説ていせつ。D現代げんだい評価ひょうかこの一言ひとことによって、ピャストの人物像じんぶつぞうが確定かくていする。彼かれは聖書せいしょの権威けんいを疑うたがっていない。疑うたがっているのは、人間にんげんの読よみ方かたである。そして同おなじ論法ろんぽうが、彼かれの天文学てんもんがくにも適用てきようされている──神かみが創つくった宇宙うちゅうに誤差ごさがあるはずがない、だから人間にんげんの記述きじゅつが間違まちがっている、と(21:46付近よんじゅうろくふきん)。〔E6 3-3節さんせつのバデーニの推論すいろんと同型どうけいである。〕D現代げんだい評価ひょうかそしてこの区別くべつが、第だい8話はちわの展開てんかいを可能かのうにする。解釈かいしゃくが誤あやまりうると認みとめる者ものだけが、自説じせつの否定ひていを検討けんとうしうる。 バデーニが後あとに「真理しんりかもしれません」と言いったとき(18:56)、それが会話かいわとして成立せいりつするのは、ピャストがこの区別くべつを持もっているからである。

真理と、読み方 聖書が真理であることと、人間の読みが正しいことは、別の命題である。 真理人間の読み方誤りうる誤らないこの区別を持つ者だけが、自説の否定を検討できる
図ず 07真理しんりと、読よみ方かた。この二ふたつを分わけられる者ものだけが、自分じぶんの説せつの否定ひていを検討けんとうの対象たいしょうにできる。

読よみ方かたが誤あやまりうると認みとめる人ひとだけが、自分じぶんの生涯しょうがいについても、同おなじ問といを受うけ取とれる。

3-8

ですが 真理しんりかもしれません
── 第だい8話はちわ バデーニ 18:56

A作品さくひん世界せかい自分じぶんの人生じんせいを懸かけた研究けんきゅうが間違まちがいだと主張しゅちょうするものだ、というピャストの拒絶きょぜつ(18:47)に対たいし、バデーニはこう返かえす。D現代げんだい評価ひょうかこの二に行ぎょうが、第だい8話はちわの到達点とうたつてんである。 バデーニは、ピャストの説せつを否定ひていしていない。彼かれが指摘してきしているのは、ピャストが捧ささげたものは説せつではなく、真理しんりを求もとめるという行為こういだったのではないか、という一点いってんである。D現代げんだい評価ひょうかもしそうなら、自説じせつの反証はんしょう(证伪/falsification)も、その行為こういの一部いちぶになる。捧ささげた対象たいしょうが「自分じぶんの天動説てんどうせつ」なら、地動説ちどうせつは敵てきである。捧ささげた対象たいしょうが「真理しんり」なら、地動説ちどうせつは候補こうほの一ひとつである。同おなじ生涯しょうがいが、どちらの記述きじゅつにもなりうる。C史実しじつここで、この人物じんぶつ造形ぞうけいの史実しじつ上じょうの対応たいおうに触ふれておく。ティコ・ブラーエ(一五四六せんごひゃくよんじゅうろく〜一六〇一せんろっぴゃくいち)は、望遠鏡ぼうえんきょう以前いぜんで最高さいこう精度せいどの観測かんそく記録きろくを蓄積ちくせきした貴族きぞくの天文学てんもんがく者しゃであり、地球ちきゅうを中心ちゅうしんに置おく独自どくじの混成こんせい体系たいけい(geo-heliocentric system)を提唱ていしょうし、生涯しょうがいそれを支持しじした定説ていせつ。彼かれは自説じせつの証明しょうめいのために記録きろくを集あつめたが、その記録きろくはケプラーの手てに渡わたり、結果けっかとして地動説ちどうせつを支ささえる三さん法則ほうそくの基礎きそになった定説ていせつ。伝つたえられるところでは、彼かれは自分じぶんが虚むなしく生いきたと思おもわれないようにと願ねがい、自説じせつの証明しょうめいをケプラーに託たくしたという有力ゆうりょく説せつ──臨終りんじゅうの言葉ことばの伝承でんしょうとして。D現代げんだい評価ひょうか作中さくちゅうのピャストが「五十年ごじゅうねんにわたる詳細しょうさいな観測かんそく記録きろく」を持もち、完璧かんぺきな天動説てんどうせつの証明しょうめいに生涯しょうがいを捧ささげる貴族きぞくとして描えがかれること(17:03付近ふきん、16:50付近ごじゅうふきん)は、この史実しじつの構造こうぞうと正確せいかくに対応たいおうしている。ただし本ほんノートは、作中さくちゅう人物じんぶつが史実しじつの誰だれかの再現さいげんであるとは主張しゅちょうしない。対応たいおうするのは人物じんぶつではなく、構造こうぞうである──誤あやまった体系たいけいのために集あつめられた正確せいかくな記録きろくが、正ただしい体系たいけいの証拠しょうこになるという構造こうぞうである。

敵の記録 誤った体系のために集められた記録が、別の体系の証拠になる。 集めた目的誤った体系の完成五十年の観測記録使われた先別の体系の証拠データは、集めた動機から独立している継承は、渡す意思がなくても起こりうる
図ず 08敵てきの記録きろく。集あつめた動機どうきと、使つかわれた先さきは、別々べつべつである。だから継承けいしょうは、渡わたす意思いしがなくても起おこりうる。

研究者けんきゅうしゃとは、資格しかくでも職しょくでもなく、止とまれないことの名前なまえである。

八やっつの言葉ことばが示しめしたのは、この回かいが普遍ふへん論争ろんそう・無謀むぼうさ・真理しんりという三みっつの主題しゅだいを通とおって、対立たいりつする二人ふたりが同おなじ語ごを使つかう地点ちてんに着地ちゃくちすることだった。では、その足場あしばは史実しじつのどこまで届とどいているのか。今回こんかいの測量そくりょうは、哲学てつがく・聖書せいしょ解釈かいしゃく・天文学てんもんがく史しの三さん方向ほうこうで高たかい妥当性だとうせいを示しめす。

Ⅳ

第だい4章よんしょう 作中さくちゅう×史実しじつ 照合表しょうごうひょう(第だい8話はちわ 新規しんき分ぶん)

結論けつろん:第だい8話はちわは、中世ちゅうせい哲学てつがく・聖書せいしょ解釈かいしゃく・天文学てんもんがく史しの三さん方向ほうこうで考証こうしょうが精密せいみつである。一点いってん、人物じんぶつの分類ぶんるいに学説がくせつ上じょうの留保りゅうほが要いる。

作中さくちゅう表現ひょうげんA作品さくひん世界せかい史実しじつC史実しじつ妥当性だとうせい補足ほそく
普遍ふへん論争ろんそうが初対面しょたいめんの会話かいわの話題わだいになる普遍ふへん論争ろんそうは中世ちゅうせい哲学てつがくの中心ちゅうしん的てき論点ろんてんであり、学派がくはの選択せんたくは立場たちばの表明ひょうめいだった高こう定説ていせつ
バデーニが唯名論ゆいめいろん者ものとしてアベラールを支持しじするアベラールは論争ろんそうの主要しゅような担にない手て。ただし現代げんだいの分類ぶんるいでは概念論がいねんろんとされることが多おおい中なか当時とうじの陣営じんえい分わけとしては成立せいりつ議論ぎろんあり
オッカムが「少々しょうしょう過激かげき」と評ひょうされるオッカムは教皇きょうこう庁ちょうと衝突しょうとつし、異端いたんの嫌疑けんぎを受うけて破門はもんされた高こう定説ていせつ
フィロラオスの中心火ちゅうしんかと、人類じんるいが火ひの見みえない側がわに住すむという説せつ中心火ちゅうしんかを宇宙うちゅうの中心ちゅうしんに置おき、地球ちきゅうを含ふくむ天体てんたいがその周囲しゅういを回まわるとした。人ひとが中心火ちゅうしんかを見みられない配置はいちも伝承でんしょうに含ふくまれる高こう定説ていせつ。第だい1話いちわノート第だい4章よんしょうと一致いっち
アリスタルコスが観測かんそく的てき事実じじつを基もとに仮説かせつを立たてたという評価ひょうか幾何学きかがく的てき手法しゅほうにより太陽たいようと月つきの距離きょり・大おおきさを推定すいていし、太陽たいよう中心ちゅうしん説せつを提唱ていしょう高こう定説ていせつ
地球ちきゅうが宇宙うちゅうの中心ちゅうしんにあることが原罪げんざいと結むすびつけられる中心ちゅうしん=最さい下層かそうという価値かち序列じょれつと、堕落だらくした人間にんげんの状態じょうたいが一体いったいの体系たいけいをなした高こう第だい4話よんわノート「世よ」の章しょうと一致いっち定説ていせつ
イカロスの誤あやまりを傲慢ごうまんではなく無知むちとする読よみ替かえ標準的ひょうじゅんてきな寓意ぐういは傲慢ごうまんへの戒いましめ。原典げんてんの警告けいこくには中庸ちゅうようの含ふくみもある高こう(反転はんてんが意図的いとてきである点てんを含ふくめ)読よみ替かえであることが作中さくちゅうでも明示めいじ的てき定説ていせつ(標準的ひょうじゅんてき読解どっかいとして)
「女おんなは黙だまって学まなぶべき」という聖書せいしょの記述きじゅつテモテへの第一だいいちの手紙てがみ2章にしょう11〜12節じゅうにせつにあたる記述きじゅつ高こう定説ていせつ
悪魔あくまが取とりつくのは女性じょせいが多おおいという論文ろんぶん『魔女まじょに与あたえる鉄槌てっつい』の主張しゅちょうに対応たいおう高こう定説ていせつ
聖書せいしょは真理しんりだが、正ただしい読よみ方かたができているかは分わからないアウグスティヌス以来いらいの解釈学かいしゃくがくの区別くべつ。ガリレオの弁明べんめいの中軸ちゅうじくでもある高こう本話ほんわの考証こうしょうの白眉はくび定説ていせつ
完璧かんぺきな天動説てんどうせつの証明しょうめいに生涯しょうがいを捧ささげ、五十年ごじゅうねんの観測かんそく記録きろくを持もつ貴族きぞくティコ・ブラーエは望遠鏡ぼうえんきょう以前いぜんで最高さいこう精度せいどの記録きろくを蓄積ちくせきし、独自どくじの地球ちきゅう中心ちゅうしんの混成こんせい体系たいけいを支持しじした。記録きろくはケプラーに渡わたり、地動説ちどうせつの三さん法則ほうそくの基礎きそになった高こう(構造こうぞうとして)人物じんぶつの再現さいげんではなく構造こうぞうの対応たいおう定説ていせつ
記録きろくを所有者しょゆうしゃだけが閲覧えつらんできるものとして独占どくせんする観測かんそく記録きろくは稀少きしょうな資産しさんであり、私有しゆうされた高こう第だい7話ななわノートと一致いっち定説ていせつ
金属製きんぞくせいの一点いってん物ぶつのアストロラーベ精密せいみつ観測かんそく器具きぐの特注とくちゅうは実在じつざい。ティコの大型おおがた観測かんそく機器ききが代表だいひょう例れい高こう定説ていせつ
貴族きぞくが天文てんもんを「下等かとうな学問がくもん」として反対はんたいする学問がくもんの階層かいそうで天文てんもんは四科しかに属ぞくし、神学しんがく・法学ほうがくより下位かい。貴族きぞくの職分しょくぶんとしても低ひくく見みられえた中なか〜高こう家門かもんによる反対はんたいの一般性いっぱんせいは有力ゆうりょく説せつ
十五じゅうご世紀せいきに地動説ちどうせつの研究けんきゅうが進行しんこうしている意図的いとてき仮構かこうの継続けいぞく低てい(意図的いとてき虚構きょこう)シリーズの中核ちゅうかく設定せってい

一語いちごだけ入いれ替かえると、教訓きょうくんが反転はんてんする。傲慢ごうまんから、無知むちへ。

とりわけ、ある貴族きぞくの造形ぞうけいには強つよい既視感きしかんがある。誤あやまった体系たいけいのために、誰だれよりも正確せいかくな記録きろくを集あつめた人物じんぶつが、史実しじつにも一人ひとりいた。その記録きろくが何なんに使つかわれたかを知しると、第だい8話はちわの構造こうぞうが見みえてくる。

Ⅴ

第だい5章ごしょう 科学かがく哲学てつがく —— 敵てきの記録きろくが、味方みかたの証拠しょうこになる

結論けつろん:第だい8話はちわは、科学かがくにおける最もっとも奇妙きみょうで、最もっとも重要じゅうような構造こうぞうを提示ていじする。誤あやまった理論りろんのために集あつめられた正確せいかくなデータが、正ただしい理論りろんを証明しょうめいする。 データは、それを集あつめた動機どうきから独立どくりつしている。

[基礎きそ]- ピャストは天動説てんどうせつを完成かんせいさせるために五十年ごじゅうねんの記録きろくを集あつめた。バデーニはその記録きろくで地動説ちどうせつを完成かんせいさせたい。同おなじ記録きろくが、両方りょうほうに使つかえる。

[発展はってん]- データの理論りろん独立性どくりつせい(theory-independence of data):観測かんそく記録きろくは、それを動機どうきづけた理論りろんが誤あやまりであっても、価値かちを失うしなわない。理論りろん負荷ふか性せい(观察渗透理论/theory-ladenness)(観測かんそくは理論りろんに染そまる)を認みとめた上うえでもなお、位置いちと時刻じこくの測定そくていは、複数ふくすうの理論りろんの間あいだで共有きょうゆうされうる〔E1 第だい11章じゅういっしょう〕定説ていせつ。- この構造こうぞうは史実しじつに対応たいおうする。ティコ・ブラーエは自みずからの地球ちきゅう中心ちゅうしんの混成こんせい体系たいけいを証明しょうめいするために最高さいこう精度せいどの記録きろくを蓄積ちくせきし、その記録きろくがケプラーの手てで楕円だえん軌道きどう(椭圆轨道/elliptical orbit)の発見はっけんに用もちいられた定説ていせつ。彼かれの記録きろくは、彼かれの説せつを葬ほうむるために使つかわれた。 そしてその記録きろくがなければ、ケプラーの発見はっけんもなかった。- [大学院だいがくいん]ここから、科学かがくの集団的しゅうだんてき性格せいかくについての帰結きけつが出でる。個人こじんの探究たんきゅうは、しばしば個人こじんの意図いとを裏切うらぎって完成かんせいする。第だい5話ごわで「継承けいしょうとは行為こういの反復はんぷくである」と述のべたが(E5 第だい10章じっしょう)、第だい8話はちわはもう一段いちだん付つけ加くわえる──継承けいしょうは、渡わたす意思いしがなくても起おこりうる。 資料しりょうは、敵対てきたいする者ものの手てに渡わたっても働はたらく。- 「イカロスにならねば」の科学かがく哲学的てつがくてき意味いみ:ピャストの読よみ替かえ(3-5節ごせつ)は、失敗しっぱいを道徳的どうとくてきな罰ばつから技術的ぎじゅつてきな課題かだいへ移うつす。この移行いこうは、科学かがくが失敗しっぱいを蓄積ちくせき可能かのうな情報じょうほうとして扱あつかえるようにする条件じょうけんである。ただし、無謀むぼうさの称揚しょうようがそのまま正当化せいとうかされるわけではない。第だい7章ななしょうと第だい8章はっしょうで、この危あやうさを自己じこ点検てんけんする。- 記録きろくの私有しゆうという制約せいやく:第だい7話ななわに続つづき、第だい8話はちわでも探究たんきゅうは所有しょゆうの構造こうぞうに従属じゅうぞくしている。ヨレンタは無断むだん閲覧えつらんするしかなく、バデーニは敵てきに頭あたまを下さげるしかない。データが私有しゆうされる社会しゃかいでは、真理しんりの探究たんきゅうは交渉こうしょうと依存いぞんの形かたちをとる。 これは倫理りんりの問題もんだいである前まえに、認識にんしきの条件じょうけんの問題もんだいである。

彼かれの記録きろくは、彼かれの説せつを葬ほうむるために使つかわれた。その記録きろくがなければ、答こたえもなかった。

データは、集あつめた者ものの意図いとから独立どくりつしている。敵てきの記録きろくが味方みかたの証拠しょうこになる。涼すずしい構造こうぞうである。だがその記録きろくを手てに入いれるために、この回かいの男おとこは、一人ひとりの少女しょうじょを計算けいさんに入いれている。

Ⅵ

第だい6章ろくしょう 倫理学りんりがく —— 利用りようと、無謀むぼうの代償だいしょう

結論けつろん:第だい8話はちわの倫理的りんりてき中心ちゅうしんは、探究たんきゅうのために他人たにんをどこまで手段しゅだんにしてよいか、である。そしてこの回かいは、その問といに答こたえを出ださない。

[発展はってん]- 悪意あくいなき利用りよう:バデーニは彼女かのじょの能力のうりょくを高たかく評価ひょうかし、同時どうじに彼女かのじょの弱よわい立場たちばを計算けいさんに入いれる(3-2節にせつ)。この二ふたつは矛盾むじゅんしない。第だい7話ななわのコルベが「善意ぜんいによる剥奪はくだつ」だったとすれば(E7 3-8節はっせつ)、バデーニは敬意けいいを伴ともなう利用りようである。相手あいてを軽かろんじていないことは、手段しゅだん化かを免責めんせきしない。- 盾たてにする計画けいかく:捕つかまったら魔女まじょに騙だまされたと密告みっこくする、という発言はつげん(17:28)は、この回かいで最もっとも冷つめたい一行いちぎょうである。彼かれはこれをオクジーにだけ語かたり、ヨレンタには告つげない。協力きょうりょくを求もとめる相手あいてに対たいして、最悪さいあくの場合ばあいの裏切うらぎりを準備じゅんびしている。 作中さくちゅうでこの計画けいかくは実行じっこうされておらず、彼かれの本気ほんき度ども測はかれない。だが、口くちに出だせる程度ていどには計算けいさんされている。- 無謀むぼうの称揚しょうようと、その代償だいしょう:ピャストは無謀むぼうさを学術がくじゅつの要件ようけんとして説とく(20:59、12:12)。若わかい彼かれにそれを教おしえたのは教授きょうじゅであり、教授きょうじゅは同時どうじに「私わたしが一人ひとりでだ」と記録きろくの独占どくせんを宣言せんげんしている(21:59)。無謀むぼうさと独占どくせんが、同おなじ人物じんぶつから同おなじ日ひに伝つたえられている。 そして老おいたピャストは、その両方りょうほうを受うけ継ついでいる。- 第だい7話ななわで扱あつかった「悪人あくにんを必要ひつようとしない制度せいど」(E7 第だい10章じっしょう)に、第だい8話はちわは別べつの型かたを加くわえる。ここでは、善ぜんき教おしえと悪あしき慣行かんこうが、同おなじ贈おくり物ものとして渡わたされる。金属きんぞくアストロラーベは本物ほんものの善意ぜんいである。同おなじ手てから、記録きろくの独占どくせんも渡わたっている。- ピャストの二に重じゅう性せい:彼かれはヨレンタの排除はいじょを「差別さべつ」と正ただしく名指なざし、直後ちょくごに正当化せいとうかの根拠こんきょを並ならべ、さらにその後ごで彼女かのじょに直接ちょくせつ論文ろんぶんを持もってこいと告つげる(14:16)。この三さん段だんを、矛盾むじゅんとして片付かたづけないほうがよい。彼かれは自分じぶんの偏見へんけんを持もったまま、能力のうりょくの評価ひょうかだけは切きり分わけている。 偏見へんけんが消きえたわけではない。だが、コルベを介かいさない経路けいろが一ひとつ開ひらいた。

省略しょうりゃくされた文脈ぶんみゃくの開示かいじ②——なぜバデーニがピャストに会あうことが、これほど無謀むぼうなのか。ピャストは学術がくじゅつの後援こうえん者しゃであり、評価者ひょうかしゃであり、そして教会きょうかいの秩序ちつじょの側がわに立たつ貴族きぞくである。彼かれに地動説ちどうせつの研究けんきゅうを告白こくはくすることは、通報つうほうの権限けんげんと動機どうきの両方りょうほうを持もつ人物じんぶつの前まえで、自みずから異端いたんを名乗なのることに等ひとしい。加くわえてバデーニは既すでに一度いちど、禁書きんしょに触ふれて左遷させんされた身みである(E6 第だい1章いっしょう)。再度さいどの嫌疑けんぎがどう扱あつかわれるかは、第だい3話さんわで扱あつかった再犯さいはん者しゃの規定きていを想起そうきさせる(E3 第だい4章よんしょう)。この一段いちだんを外はずすと、彼かれの逡巡しゅんじゅんが臆病おくびょうに見みえる。実際じっさいには、生存せいぞんを賭かけた計算けいさんである。

高たかく評価ひょうかしていることは、手段しゅだんにしていないことの証拠しょうこにならない。

高たかく評価ひょうかしながら、弱よわい立場たちばを勘定かんじょうに入いれる。悪意あくいはない。それでも手段しゅだん化かである。この曖昧あいまいさの前まえでは、読よむ目めも定さだまらない。定さだまりにくい場所ばしょに、今回こんかいも印しるしをつけておく。

Ⅶ

第だい7章ななしょう 私わたしが見落みおとしやすい視点してん(第だい8話はちわ 新規しんき12項目じゅうにこうもく)

結論けつろん:以下いかを第だい1話いちわ16項目じゅうろくこうもく・第だい2話にわ12項目じゅうにこうもく・第だい3話さんわ12項目じゅうにこうもく・第だい4話よんわ12項目じゅうにこうもく・第だい5話ごわ12項目じゅうにこうもく・第だい6話ろくわ12項目じゅうにこうもく・第だい7話ななわ12項目じゅうにこうもくに追加ついかする。

  1. 普遍ふへん論争ろんそうを衒学げんがくとして読よまない。学派がくはの表明ひょうめいは身元みもとの確認かくにんであり、どこまで話はなせるかの相互そうご測定そくていである。
  2. アベラールの分類ぶんるいに留保りゅうほを置おく。現代げんだいでは概念論がいねんろんとされることが多おおく、作中さくちゅうの分類ぶんるいは当時とうじの陣営じんえい分わけとしては成立せいりつする。
  3. ヨレンタの正統性せいとうせいを軽かるく見みない。彼女かのじょは原罪げんざいと宇宙論うちゅうろんの一体いったい性せいを正確せいかくに語かたっている。無知むちだから拒絶きょぜつしたのではない。
  4. バデーニの計算けいさんが二に段だんあること。属性ぞくせいによる安全あんぜん計算けいさん(女性じょせいだから)を、会話かいわの後あとで態度たいどの判断はんだん(研究者けんきゅうしゃだから)に更新こうしんしている。
  5. 同おなじ事実じじつが庇護ひごにも利用りようにもなること。第だい7話ななわのコルベと第だい8話はちわのバデーニは、同おなじ社会的しゃかいてき弱よわさを逆向ぎゃくむきに使つかっている。
  6. イカロス解釈かいしゃくの省略しょうりゃく部分ぶぶん。原典げんてんの警告けいこくには中庸ちゅうようの含ふくみがあり、ピャストはそれを落おとして引用いんようしている。
  7. 「差別さべつされている」と正ただしく名指なざした人物じんぶつが、正当化せいとうかを試こころみること。誤認ごにんしていないまま、正当化せいとうかが来くる。
  8. 名指なざされた排除はいじょには反論はんろんできること。第だい7話ななわの名指なざされない排除はいじょとの差異さいを見落みおとさない。
  9. 聖書せいしょの真理しんり性せいと、読よみ方かたの正ただしさの区別くべつ。この区別くべつがなければ、第だい8話はちわ後半こうはんの対話たいわは成立せいりつしない。
  10. データが動機どうきから独立どくりつしていること。誤あやまった理論りろんのための正確せいかくな記録きろくが、正ただしい理論りろんの証拠しょうこになる。
  11. 継承けいしょうは渡わたす意思いしがなくても起おこること。第だい5話ごわの定義ていぎに加くわわる修正しゅうせいである。
  12. 無謀むぼうさと独占どくせんが同おなじ手てから渡わたされたこと。教授きょうじゅの贈おくり物ものは、善意ぜんいと悪あしき慣行かんこうの両方りょうほうだった。

無謀むぼうさと独占どくせんが、同おなじ手てから、同おなじ日ひに渡わたされた。

十二じゅうにの死角しかくのうち、最後さいごの二ふたつが重おもい──継承けいしょうは渡わたす意思いしがなくても起おこること、そして、無謀むぼうさと独占どくせんが同おなじ手てから渡わたされたこと。贈おくり物ものの中身なかみを見分みわけるために、反論はんろんを五いつつ育そだてておく。

Ⅷ

第だい8章はっしょう 反対はんたい解釈かいしゃく(第だい8話はちわ 新規しんき5つ)

結論けつろん:「志こころざしを同おなじくする者ものたちが集あつまり始はじめる高揚こうようの回かい」という標準的ひょうじゅんてき読解どっかいに対たいし、以下いかが成立せいりつする。

  1. バデーニ=勧誘かんゆう者しゃ論ろんの徹底てってい。彼かれは相手あいての思想しそう的てき立場たちばを測はかり、安全性あんぜんせいを計算けいさんし、少すこしずつ深ふかいところへ誘導ゆうどうし、拒絶きょぜつされても伝言でんごんを残のこす。これは説得せっとくではなく、手続てつづきの整ととのった勧誘かんゆうである。第だい2話にわのフベルト、第だい4話よんわの異端いたん者ものに続つづく系譜けいふであり、毎回まいかい、相手あいてはより弱よわい立場たちばの者ものになっている。
  2. ヨレンタの決断けつだんへの懐疑かいぎ。彼女かのじょが名乗なのったのは、ピャストから直接ちょくせつ論文ろんぶんを持もってこいと言いわれた直後ちょくごである。新あたらしい後うしろ盾だてを得とくたから名乗なのれたのだ、という読よみが成立せいりつする。この読よみでは、第だい8話はちわは勇気ゆうきの物語ものがたりではなく、条件じょうけんが変かわれば人ひとは名乗なのれるという構造こうぞうの記述きじゅつになる。
  3. ピャストの限界げんかい。彼かれは「正ただしい読よみ方かたができているかは分わからない」と述のべながら、バデーニを二に度ど追おい返かえす。区別くべつを持もっていることと、それを自分じぶんの生涯しょうがいに適用てきようできることは別べつである。彼かれの柔軟じゅうなんさは、原理げんりとしては存在そんざいし、実践じっせんとしてはまだ働はたらいていない。
  4. 無謀むぼうさの称揚しょうようへの疑義ぎぎ。ピャストの読よみ替かえは魅力的みりょくてきだが、蝋ろうが溶とけると知しった上うえで鋼はがねを作つくれというのは、資源しげんのある者ものにしか言いえない。金属きんぞくアストロラーベを与あたえられる立場たちばの教おしえである。持もたざる者ものにとって、無謀むぼうさはしばしば単たんなる死しである。
  5. 「真理しんり」という語ごの空洞化くうどうか。この回かいで四人よにんが「真理しんり」を使つかう。ピャストは完璧かんぺきな天動説てんどうせつを、バデーニは地動説ちどうせつを、ヨレンタは聖書せいしょの正ただしい読解どっかいを、教授きょうじゅは誤差ごさのない宇宙うちゅうを指さしている。同おなじ語ごが四よっつの別べつのものを指さすとき、その語ごは何なにを意味いみしているのか。 一致いっちしているように見みえる場面ばめんが、実じつは最もっとも一致いっちしていない可能性かのうせいがある。

鋼はがねの翼つばさを作つくれと言いえるのは、鋼はがねを持もっている人ひとだけである。

五いつつの反対はんたい解釈かいしゃく、とりわけ最後さいごの一ひとつ──四人よにんが同おなじ語ごを使つかうとき、それは一致いっちなのかという疑うたがい──を携たずさえたまま、八冊はっさつのノートを重かさねる。

Ⅸ

第だい9章きゅうしょう 第だい1〜7話ななわノートとの接続せつぞく(差分さぶんマップ)

結論けつろん:第だい8話はちわは、シリーズが積つみ上あげた要素ようそを、対立たいりつする二人ふたりの対面たいめんに集約しゅうやくする。

前話ぜんわノートの箇所かしょ第だい8話はちわでの交差こうさ
E1 第だい4章よんしょう:フィロラオス・アリスタルコス会話かいわの題材だいざいとして直接ちょくせつ語かたられる
E1 第だい7章ななしょう:自然しぜん神学しんがくと解釈学かいしゃくがく「正ただしい読よみ方かたができているかは分わからない」として台詞せりふ化か
E2 3-4節よんせつ:二に書しょ説せつと聖書せいしょ解釈かいしゃく同上どうじょう。ピャストの立場たちばとして提示ていじされる
E3 第だい4章よんしょう:再犯さいはん者しゃの規定きていバデーニの逡巡しゅんじゅんの背景はいけい(本文ほんぶんでは明示めいじされない前提ぜんてい)
E4 世よの章しょう:中心ちゅうしん=最さい下層かそうと原罪げんざいヨレンタが正統的せいとうてきな立場たちばから語かたり直なおす
E5 第だい10章じっしょう:継承けいしょうは行為こういの反復はんぷくである「渡わたす意思いしがなくても起おこる」という修正しゅうせいが加くわわる
E6 3-2節にせつ:バデーニの動機どうきと傲慢ごうまんイカロス解釈かいしゃくにより、傲慢ごうまんの主題しゅだいが正面しょうめんから扱あつかわれる
E6 3-3節さんせつ:神かみは誤あやまらない、ゆえにピャストの「神かみが創つくった世界せかいに誤差ごさがある」として反復はんぷく
E7 3-6節ろくせつ:女性じょせい名義めいぎでは読よまれない同おなじ事実じじつが、利用りようの根拠こんきょとして反転はんてんして使つかわれる
E7 3-7節ななせつ:私わたしのものではないです「私わたしのものです」として正面しょうめんから反転はんてんする
E7 第だい5章ごしょう:記録きろくの私有しゆうピャストの記録きろくと、教授きょうじゅの独占どくせん宣言せんげんとして構造化こうぞうかされる
知の系譜(第8話版)── 出会った二人と、まだ渡されていない記録 線の種類は史料の確度。最下部は作品世界で、色で峻別される。新しいノードは、いずれも匿名。 ギリシア ローマ イスラーム圏 ラテン西方 伝達経路は未確定 (数学的同一性は確立) ピタゴラス派・フィロラオス 「地球は中心でなくてよい」という発想 ヘラクレイデス 自転による日周運動の説明可能性 アリスタルコス 太陽中心・地球公転の明示的仮説 プトレマイオス 高精度予測装置と、内部のエカント問題 イブン・アル=ハイサム 『プトレマイオス疑義』── 批判の口火 マラーガ学派(トゥースィー、ウルディー) エカントなしで同精度を出す数学装置 イブン・アル=シャーティル 月・水星の高精度モデル ビュリダン 運動の相対性(船の例)、インペトゥス理論 オレーム 自転反対論の論駁 ── しかし結論は地球静止 レギオモンタヌス 『アルマゲスト梗概』── 理論天文学の刷新 コペルニクス 部品の統合と、太陽中心への配置転換 一七〇二年 彗星の発見者 ── 報告に名が載らず 作品世界 フベルト 地動説の命名/観測記録 ラファウ 火中からの継承 ラファウ 宣言と封印 石箱の在りかを知る者 ── 岩の一文字を見つけた二人 発見者・計算修正 ── 名を残さず 代闘士A 空を見るのが苦手 代闘士B 火星を二年 読解に到達した者 後進を作らないという宣言 名乗り出た解答者 出会った 史実の列とは結線しない 凡例 ── 実線=定説 破線=有力説 点線=議論あり 銀=作品世界 十六世紀末誤った体系のために集められた最高精度の記録一六〇九年その記録から、楕円の解答が出るまだ渡されていない五十年の記録を持つ者
図ず 09点線てんせんが一本いっぽん、実線じっせんに変かわった。かわりに、まだ渡わたされていない記録きろくへの点線てんせんが一本いっぽん増ふえる。史実しじつの列れつにも、誤あやまった体系たいけいのための記録きろくとその行いき先さきが加くわわる。
大タイムライン(第8話版)── 記録が、次の手へ渡るまで 知識の年表は、無知の年表と対である。帰属の欠落もまた、年表の上にある。 前399 ソクラテスの死(アテナイ) 知 ── 独房と哲学の系譜の起点 未 ── 死の先 前4世紀 アリストテレスの宇宙論 知 ── 球体地球、月食の影 未 ── 惑星距離、慣性 前3世紀 アリスタルコスの太陽中心説 知 ── 天体距離推定の方法 未 ── 視差検出の手段 2世紀 『アルマゲスト』 知 ── 惑星位置の高精度計算 未 ── 実在性の検証法 4–5世紀 curiositas が悪徳として定式化 知 ── 知の秩序と目的 未 ── その線引きの根拠 8–13世紀 イスラーム圏の翻訳・批判 知 ── エカントの理論的欠陥 未 ── 配置転換の動機 13世紀 studiositas と curiositas の対比 知 ── 徳としての学び 未 ── 境界の可動性 14世紀 ビュリダン・オレーム 知 ── 運動の相対性 未 ── 主張し切る理由 15世紀 作品の想定世界 知 ── 部品はほぼ全部 未 ── 組み立てる者 1440頃 印刷術 知 ── 同一の版を大量に作る技術 未 ── その社会的帰結 1487 『魔女に与える鉄槌』刊行 知 ── 逸脱を名指す語彙 未 ── その被害の総量 1543 『天球回転論』 知 ── 太陽中心の体系 未 ── 楕円軌道、観測的証拠 1609 ケプラー『新天文学』── 楕円の解答 知 ── 楕円と面積速度 未 ── その力学的理由 ── 真円と等速を捨てた年 1633 ガリレオ裁判 知 ── ─ 未 ── ─ 1687 『プリンキピア』 知 ── 天地を貫く力学 未 ── 光速の意味 1702 ベルリンでの彗星発見 知 ── 観測の事実 未 ── 報告に名が載らないこと 1729 光行差(ブラッドリー) 知 ── 地球公転の最初の直接的観測証拠 未 ── 公転速度の意味 1838 ベッセル、恒星視差を検出 知 ── 公転の直接証拠 未 ── 銀河の外の宇宙 1851 フーコーの振り子 知 ── 自転の直接実証 未 ── 慣性系の起源 1993 この偏りに名前が付く 知 ── 帰属の非対称という概念 未 ── それを消す方法 現在 現代宇宙論 知 ── 組成の約95%が未同定と知る 未 ── その95% 破れた円環の、答えの在りか 約三百年後 ── ようやく、この偏りに名前が付く ラファウの見積もり:30〜40年 史実:約300年 知 ── そのとき知っていたこと  未 ── まだ知らなかったこと 十二世紀普遍論争の最盛期十四世紀唯名論者が教皇庁と衝突一五七二年・一五七七年天は不変ではないと示す観測一六〇一年記録が次の手へ渡る八年後、楕円が見つかる
図ず 10下したの帯おびが第だい8話はちわぶん。一六〇一せんろっぴゃくいち年ねんに記録きろくが次つぎの手てへ渡わたり、八はち年後ねんごに楕円だえんが見みつかる。

第だい7話ななわで「私わたしのものではない」と言いった口くちが、一話いちわをまたいで反転はんてんする。

対応表たいおうひょうを見みると、この回かいが対面たいめんの回かいであることが分わかる。第だい7話ななわまでに積つみ上あがったものが、応接間おうせつまと教授きょうじゅ室しつという二ふたつの部屋へやで、正面しょうめんからぶつかる。その部屋へやの空気くうきの中なかで、結論けつろんを書かく。

Ⅹ

第だい10章じっしょう 結論けつろん —— 同おなじ一語いちごを、四人よにんが使つかう

結論けつろん:第だい8話はちわの題名だいめいは、翼つばさを作つくり直なおせという命令めいれいである。だがこの回かいが本当ほんとうに示しめしたのは、翼つばさの材質ざいしつの話はなしではない。対立たいりつする二人ふたりが、同おなじ一語いちごを使つかえたということである。

第だい8話はちわには、四よっつの「真理しんり」がある。

ピャストにとって、それは誤差ごさのない完璧かんぺきな天動説てんどうせつである。バデーニにとって、それは地球ちきゅうが動うごくという仮説かせつである。ヨレンタにとって、それは聖書せいしょの正ただしい読解どっかいである。若わかき日ひの教授きょうじゅにとって、それは自分じぶんひとりで到達とうたつする宇宙うちゅうの完成かんせいだった。

四人よにんとも、同おなじ語ごを使つかう。そして四人よにんとも、別べつのものを指さしている。

普通ふつうなら、これは対話たいわの失敗しっぱいである。同おなじ語ごが違ちがうものを指さすとき、会話かいわは噛かみ合あわない。

だが第だい8話はちわの終盤しゅうばんで、噛かみ合あう瞬間しゅんかんがある。

生涯しょうがいを懸かけた研究けんきゅうが間違まちがいだと言いわれて、ピャストは帰かえれと言いった。バデーニは食くい下さがらず、こう返かえしただけである。ですが真理しんりかもしれません、それを求もとめて人生じんせいを捧ささげたのでしょう、と。

この一行いちぎょうが届とどくのは、二人ふたりが同おなじ語ごを使つかっているからではない。二人ふたりとも、その語ごが自分じぶんの説せつより上位じょういにあると認みとめているからである。

ピャストは、聖書せいしょは真理しんりだが自分じぶんたちの読よみ方かたは誤あやまりうると言いった。バデーニは、自分じぶんの説せつも真理しんりの候補こうほにすぎないという形かたちで提案ていあんした。どちらも、自分じぶんが握にぎっているものを最終さいしゅう審級しんきゅうに置おいていない。

これが、この作品さくひんが六話ろくわかけて描えがいてきた「真理しんりを求もとめる」ということの、たぶん最小さいしょうの定義ていぎである。自分じぶんが間違まちがっているかもしれないという場所ばしょを、体系たいけいのどこかに空あけておくこと。

そしてピャストは、二に度目どめも帰かえれと言いった。第だい8話はちわの時点じてんで、彼かれはまだ渡わたしていない。

それでも彼かれは、一ひとつだけ渡わたした。名前なまえを奪うばわれた少女しょうじょに、コルベを介かいさず自分じぶんに直接ちょくせつ論文ろんぶんを持もってこいと言いった。差別さべつを正当化せいとうかする根拠こんきょを並ならべた同おなじ口くちで。

第だい8話はちわは、誰だれも改心かいしんしない回かいである。ピャストの偏見へんけんは消きえず、バデーニの計算けいさんは冷つめたいままで、ヨレンタは後うしろ盾だてを得とくてから名乗なのった。高揚こうようの場面ばめんは多おおいが、変化へんかはごく小ちいさい。

だが、その小ちいさな変化へんかは、確たしかに起おきている。

主人しゅじんはいません、と彼女かのじょは言いった。この解答かいとうは私わたしのものです、と。

第だい7話ななわで「私わたしのものではないです」と言いった同おなじ口くちが、一話いちわをまたいで、反転はんてんする。

翼つばさはまだ蝋ろうである。鋼はがねはまだ、誰だれも持もっていない。

四つの真理 同じ一語を四人が使い、四人とも別のものを指している。 真理誤差のない、完璧な天動説地球が動くという仮説聖書の、正しい読解ひとりで到達する、宇宙の完成同じ語が、四つの別のものを指している
図ず 11四よっつの真理しんり。同おなじ語ごが四よっつの別べつのものを指さすとき、一致いっちして見みえる場面ばめんが、実じつは最もっとも一致いっちしていない。
翼の材質(再掲) 扉の図の小型再掲。左が蝋、右が鋼。右の矢印は太陽に届いていない。 蝋溶ける鋼まだ、誰も持っていない途切れる届いていない従来の読み:挑んだことが誤りこの回の読み:条件が足りなかった一語だけ入れ替えると、教訓が反転する
図ず 12翼つばさの材質ざいしつ(再掲さいけい)。教訓きょうくんが反転はんてんしても、鋼はがねはまだ誰だれの手てにもない。

最後さいごに、部屋へやの話はなしをしたい。

第だい8話はちわには、二ふたつの部屋へやがある。

一ひとつは、老おいた貴族きぞくの部屋へや。そこへ、左遷させんされた修道士しゅうどうしが入はいっていく。持もってきたのは、その貴族きぞくの生涯しょうがいを否定ひていする仮説かせつである。追おい返かえされる。二に度ど。

もう一ひとつは、遠とおい昔むかしの教授きょうじゅ室しつ。若わかい日ひの同おなじ貴族きぞくが入はいっていき、金属きんぞくの観測かんそく器具きぐを渡わたされて出でてくる。あの部屋へやで、彼かれは無謀むぼうであれと教おそわった。そして、記録きろくは自分じぶんひとりのものだ、とも教おそわった。

同おなじ人物じんぶつの、五十年ごじゅうねんをはさんだ二ふたつの部屋へやである。

若わかい彼かれは、与あたえられた。老おいた彼かれは、与あたえていない。

これを堕落だらくと呼よぶのは、たぶん簡単かんたんすぎる。彼かれが渡わたさないのは、意地悪いじわるだからではない。渡わたした瞬間しゅんかん、五十年ごじゅうねんが意味いみを変かえてしまうからだ。完璧かんぺきな天動説てんどうせつのために積つみ上あげた記録きろくが、地球ちきゅうを動うごかすために使つかわれる──それは、彼かれの生涯しょうがいを、彼かれの意図いとしなかった何なにかに作つくり替かえることである。

人ひとは、自分じぶんの人生じんせいが別べつの物語ものがたりの材料ざいりょうとして使つかわれることに、簡単かんたんには同意どういできない。

だから彼かれは、帰かえれ、と言いった。二に度ど。

それでも、修道士しゅうどうしの返かえした一行いちぎょうは、たぶん彼かれの中なかに残のこっている。あなたが捧ささげたのは、自分じぶんの説せつではなく、真理しんりを求もとめることだったのではないか、と。

もしそうなら、記録きろくを渡わたすことは敗北はいぼくではない。捧ささげたものを、最後さいごまで捧ささげきることになる。

だが、それを認みとめるには、五十年ごじゅうねんを別べつの名前なまえで呼よび直なおさなければならない。

第だい8話はちわは、その呼よび直なおしが起おきるかどうかを、宙ちゅうに浮うかせたまま終おわる。

そして、もう一ひとつの反転はんてんは、すでに起おきている。

前まえの回かいで、一人ひとりの少女しょうじょが、自分じぶんの書かいたものを「私わたしのものではない」と言いった。誰だれにも強制きょうせいされず、自分じぶんの口くちで。

この回かいで、同おなじ口くちが言いう。主人しゅじんはいません。この解答かいとうは、私わたしのものです、と。

条件じょうけんは変かわった。新あたらしい後うしろ盾だてができた。だからこそ言いえたのだ、という読よみ方かたもできる。冷つめたい読よみ方かただが、たぶん正ただしい。人ひとは、条件じょうけんが整ととのったときに、初はじめて名乗なのれる。

それでも──言葉ことばが変かわったことは、事実じじつである。

翼つばさはまだ蝋ろうである。誰だれも鋼はがねを持もっていない。太陽たいようは、まだ遠とおい。

それでも、この回かいで、名前なまえを取とり戻もどした人ひとが一人ひとりいる。

油彩。寝台に身を起こした老人が、こちらを見ている。傍らの小机に金属の観測器具が立てかけてある。

章扉しょうとびら ── 五十年ごじゅうねんを、別べつの名前なまえで呼よび直なおせるか

自分じぶんが間違まちがっているかもしれない場所ばしょを、体系たいけいのどこかに空あけておくこと。

補遺ほい・問とい

問といの章しょう 答こたえのない問とい

六むっつ。答こたえは出でない。出でないことを確認かくにんするために置おく。

ここから先さきは、答こたえの出でない六むっつの問といである。

第だい8話はちわを見み終おえたあとに残のこるのは、たぶん高揚こうようだろう。名乗なのる少女しょうじょ、無謀むぼうを説とく老人ろうじん、敵てきに頭あたまを下さげる修道士しゅうどうし。どの場面ばめんも、まっすぐで、気持きもちがいい。

その気持きもちよさを、少すこしだけ疑うたがってほしい。

老人ろうじんは偏見へんけんを捨すてていない。修道士しゅうどうしは少女しょうじょを計算けいさんに入いれている。少女しょうじょは後うしろ盾だてを得とくてから名乗なのった。誰だれも改心かいしんしていない。

六むっつの問といには、十五じゅうご世紀せいきからの声こえと、現代げんだいからの声こえを置おいた。今回こんかいは、両者りょうしゃが同おなじ側がわに立たつ場面ばめんもある。無謀むぼうさの危あやうさについて、中世ちゅうせいの警告けいこくは、いまも有効ゆうこうかもしれない。

問とい一いち 分類ぶんるいは、世界せかいに実在じつざいするのか、人間にんげんが引ひいた線せんなのか

中世ちゅうせいからの声こえ実在じつざいする。神かみは世界せかいを種しゅと類るいに分わけて創つくられた。人間にんげんの言葉ことばは、その秩序ちつじょに名前なまえを与あたえているにすぎない。分類ぶんるいが人間にんげんの恣意しいなら、天てんと地ちの区別くべつも、聖せいなるものと俗ぞくなるものの区別くべつも根拠こんきょを失うしなう。それは秩序ちつじょそのものの否定ひていである。

現代げんだいからの声こえ多おおくの分類ぶんるいは人間にんげんの実践じっせんの産物さんぶつである。ただし、すべてが恣意的しいてきなわけでもない。自然界しぜんかいの区分くぶんの一部いちぶは、私わたしたちの都合つごうとは独立どくりつに働はたらいている。問題もんだいは、どの分類ぶんるいがどちらなのかを、その内側うちがわにいる者ものが判定はんていできるかである。

開ひらかれた問といでは、自分じぶんを分類ぶんるいしている線せんが、実在じつざいなのか人為じんいなのかを、分類ぶんるいされている当人とうにんはどうやって見分みわけるのか。見分みわけられないまま、その線せんに従したがうことは、何なにを意味いみするのか。

問とい二に イカロスの誤あやまりは、傲慢ごうまんだったのか、無知むちだったのか

中世ちゅうせいからの声こえ傲慢ごうまんである。人ひとには定さだめられた分ぶんがあり、太陽たいようは人ひとの領分りょうぶんではない。翼つばさの材質ざいしつは問題もんだいではない。上うえを目指めざしたこと自体じたいが、秩序ちつじょへの侵犯しんぱんである。より良よい翼つばさを作つくれという教おしえは、罪つみを技術ぎじゅつで解とこうとする、より深ふかい傲慢ごうまんである。

現代げんだいからの声こえ無知むちである。失敗しっぱいは道徳的どうとくてきな罰ばつではなく、条件じょうけんの不足ふそくである。条件じょうけんは更新こうしんできる。ただし、あらゆる限界げんかいを技術的ぎじゅつてき課題かだいとして扱あつかう姿勢しせいが、制御せいぎょを超こえた結果けっかを生うんできたことも、二十にじゅう世紀せいきが示しめしている。

開ひらかれた問といでは、越こえてはならない限界げんかいと、まだ越こえられていない限界げんかいを、挑いどむ前まえにどうやって区別くべつするのか。区別くべつできないまま挑いどむことを、私わたしたちは何なにと呼よぶべきなのか。

問とい三さん 生涯しょうがいを捧ささげた説せつが誤あやまりだと言いわれたとき、人ひとは何なにを守まもるべきか

中世ちゅうせいからの声こえ真理しんりに仕つかえることが目的もくてきであり、説せつはその手段しゅだんである。だが、一ひとつの体系たいけいに生涯しょうがいを捧ささげた者ものにとって、体系たいけいの否定ひていは自分じぶんの全ぜん生涯しょうがいの否定ひていに等ひとしい。それを受うけ入いれよと求もとめることは、その人ひとの人生じんせいの意味いみを返上へんじょうせよと求もとめることである。

現代げんだいからの声こえ科学かがくの規範きはんは、自説じせつへの執着しゅうちゃくより証拠しょうこへの忠実ちゅうじつを求もとめる。だが規範きはんがそう言いうことと、人ひとがそう振ふる舞まえることは別べつである。誤あやまりを認みとめた者ものの生涯しょうがいが、それによって無価値むかちになるわけではない──むしろ、記録きろくは残のこる。

開ひらかれた問といでは、その人ひとが誤あやまりを認みとめないまま死しんだとき──残のこされた記録きろくが別べつの説せつを証明しょうめいしたとき、私わたしたちはその生涯しょうがいを何なにと呼よぶべきなのか。失敗しっぱいか、貢献こうけんか、それとも両方りょうほうか。

問とい四よん 聖書せいしょが真理しんりであることと、正ただしく読よめていることは、同おなじか

中世ちゅうせいからの声こえ同おなじではない。神かみの言葉ことばは誤あやまらないが、読よむ人間にんげんは誤あやまる。だからこそ教会きょうかいの権威けんいが要いる。個々人ここじんが勝手かってに読よみ始はじめれば、真理しんりは無数むすうの解釈かいしゃくに砕くだける。読よみの正ただしさを保証ほしょうするのは、共同体きょうどうたいと伝統でんとうである。

現代げんだいからの声こえ同おなじではない、という点てんは共有きょうゆうできる。だが、では誰だれが正ただしい読よみを決きめるのかという問といには、現代げんだいも答こたえを持もっていない。権威けんいが決きめるなら権威けんいの誤あやまりを訂正ていせいできず、各自かくじが決きめるなら共有きょうゆうできない。

開ひらかれた問といでは、権威けんいも個人こじんも誤あやまりうるとき──誤あやまった読よみを訂正ていせいする手続てつづきは、どこから来くるのか。訂正ていせいする側がわの読よみは、誰だれが保証ほしょうするのか。

問とい五ご 探究たんきゅうのために、他人たにんをどこまで手段しゅだんにしてよいか

中世ちゅうせいからの声こえ人ひとは神かみの像ぞうであり、目的もくてきとして扱あつかわれるべきである。だが、共同体きょうどうたいの善ぜんのために各人かくじんが役割やくわりを果はたすことは、手段しゅだん化かではなく秩序ちつじょへの参与さんよである。問題もんだいは、その役割やくわりが本人ほんにんの救済きゅうさいに資しするかどうかである。

現代げんだいからの声こえ人ひとを単たんに手段しゅだんとしてのみ扱あつかってはならない、というのが近代きんだい倫理りんりの基本きほんである。だが実際じっさいの協働きょうどうでは、誰だれもが誰だれかの手段しゅだんでもある。境界きょうかいは、相手あいてが自分じぶんの位置いちを知しっているかどうか、そして降おりられるかどうかにある。

開ひらかれた問といでは、相手あいてを高たかく評価ひょうかしながら、同時どうじにその弱よわい立場たちばを計算けいさんに入いれているとき──その関係かんけいは、協力きょうりょくなのか、利用りようなのか。評価ひょうかが本物ほんものであることは、免責めんせきになるのか。

問とい六ろく 同おなじ語ごを使つかう人々ひとびとは、同おなじものを指さしているか

中世ちゅうせいからの声こえ語ごは事物じぶつの本性ほんしょうを指さす。真理しんりという語ごが指さすものは一ひとつであり、人ひとによって違ちがうように見みえるのは、認識にんしきの不完全ふかんぜんさのためである。争あらそいは語ごの多義たぎ性せいではなく、人間にんげんの側がわの曇くもりから生しょうじる。

現代げんだいからの声こえ同おなじ語ごが異ことなる概念がいねんを指さすことは、日常的にちじょうてきに起おきている。合意ごういに見みえるものが、実じつは語ごの一致いっちにすぎない場合ばあいがある。そして厄介やっかいなのは、その不一致ふいっちが、対話たいわが壊こわれるまで表面化ひょうめんかしないことである。

開ひらかれた問といでは、対立たいりつする二人ふたりが同おなじ語ごを使つかって通つうじ合あえたとき──それは本当ほんとうに通つうじ合あったのか、それとも、まだ露見ろけんしていない不一致ふいっちを抱かかえたままなのか。確たしかめる方法ほうほうは、あるのか。

六むっつとも、答こたえは出でなかった。

とくに二ふたつ目め──イカロスの誤あやまりは傲慢ごうまんか、無知むちか──について、私わたしたちは答こたえを出だした気きになっている。もちろん無知むちだ、条件じょうけんを整ととのえればいい、と。

近代きんだいの数百すうひゃく年ねんは、その答こたえで動うごいてきた。そして実際じっさいに、多おおくのことができるようになった。

だが、越こえてはならない限界げんかいと、まだ越こえられていない限界げんかいを、挑いどむ前まえに見分みわける方法ほうほうを、私わたしたちはまだ持もっていない。

見分みわけられないまま挑いどむことを、中世ちゅうせいは傲慢ごうまんと呼よんだ。私わたしたちは挑戦ちょうせんと呼よぶ。

どちらの語ごも、飛とび立たつ前まえの人ひとには、区別くべつがつかない。

附ふ・人ひと

付録ふろく2 人物じんぶつカード(第だい8話はちわゲート)

第だい8話はちわ終了しゅうりょう時点じてんまでの情報じょうほうに限かぎる。人物じんぶつ画像がぞうは本話ほんわでは用もちいず、文ぶんだけで組くんだ。

ピャスト伯はく

項目こうもく内容ないよう
日本語にほんご表記ひょうきピャスト(作中さくちゅうでは「ピャスト伯はく」「ピャスト様さま」と呼よばれる)
中文ちゅうぶん表記ひょうき訳語やくご未確定みかくてい
EnglishPiast(出典しゅってん:https://www.behindthevoiceactors.com/tv-shows/Orb-On-the-Movements-of-the-Earth/ )※確認かくにんを要ようする場合ばあいは組くみ手ては頁ページに出ださないこと
声優せいゆう未確認みかくにん(出典しゅってんを確認かくにんできず。組くみ手ては頁ページに載のせないこと)
立場たちば貴族きぞく。天文てんもん研究けんきゅう施設しせつの主宰者しゅさいしゃであり、資金しきんの出だし手て。研究員けんきゅういんを雇用こようしている。高齢こうれいで咳せき込こむ描写びょうしゃがある
性格せいかく前置まえおきを嫌きらい、率直そっちょくに述のべる。偏見へんけんを口くちにする一方いっぽう、能力のうりょくの評価ひょうかは切きり分わける
背景はいけい若わかい頃ころ、天文てんもんを学まなぶことを父ちちに反対はんたいされ、一族いちぞくの恥はじと言いわれた。遠縁とおえんにあたる教授きょうじゅのもとで金属きんぞくアストロラーベを与あたえられ、観測かんそくを始はじめた。遠目とおめが利きく
思想しそう完璧かんぺきな天動説てんどうせつの証明しょうめいに人生じんせいを捧ささげている。プトレマイオスの宇宙うちゅうは真理しんりとは思おもえない。大衆たいしゅうが納得なっとくしようと、我々われわれだけは真理しんりの探究たんきゅうを諦あきらめてはならない。イカロスの誤あやまりは傲慢ごうまんではなく無知むちであり、蝋ろうで駄目だめなら鋼はがねの翼つばさを作つくるべきである。聖書せいしょは真理しんりだが、今いまの我々われわれに正ただしい読よみ方かたができているかは分わからない
この話はなしまでに明あかされた事実じじつ・もうじき死しぬと自みずから告つげた
・五十年ごじゅうねんにわたる詳細しょうさいな観測かんそく記録きろくを持もつ(ヨレンタの証言しょうげん)
・イカロスの神話しんわを引ひき、無謀むぼうさの必要ひつようを説といた
・ヨレンタの排除はいじょを差別さべつと名指なざしつつ、正当化せいとうかしうる根拠こんきょも挙あげた
・ヨレンタに、コルベではなく自分じぶんに直接ちょくせつ論文ろんぶんを持もってくるよう告つげた
・バデーニの申もうし出でを二に度ど拒絶きょぜつした
この話はなしではまだ書かいてはいけないこと・第だい9話きゅうわ以降いこうの展開てんかい・行動こうどう・運命うんめいの一切いっさい
・彼かれが記録きろくを貸かすか否いなか
・病名びょうめい・余命よめいに関かんする具体的ぐたいてきな記述きじゅつ
・彼かれが真理しんりと自説じせつのどちらを選えらぶかの断定だんてい
・教授きょうじゅのその後ごとの関係かんけい

ヨレンタ

項目こうもく内容ないよう
日本語にほんご表記ひょうきヨレンタ
中文ちゅうぶん表記ひょうき訳語やくご未確定みかくてい
EnglishJolenta(出典しゅってん:同上どうじょう)※確認かくにんを要ようする場合ばあいは頁ページに出ださないこと
声優せいゆう未確認みかくにん(同上どうじょう)
立場たちばピャストの施設しせつに籍せきを置おく。図書館としょかん勤務きんむ。十四歳じゅうよんさい
性格せいかく内心ないしんで早口はやくちに自問じもんする。恐おそれながら理解りかいを止とめられない
背景はいけい第だい7話ななわのカードを継承けいしょう
思想しそう唯名論ゆいめいろんを支持しじし、真理しんりの探究たんきゅうには大胆だいたんさが不可欠ふかけつだと考かんがえる。一方いっぽうで、地球ちきゅうが宇宙うちゅうの中心ちゅうしんにあることは原罪げんざいを背負せおった人類じんるいの宿命しゅくめいであるという正統的せいとうてきな理解りかいも持もつ
この話はなしまでに明あかされた事実じじつ・普遍ふへん論争ろんそうでオッカムを支持しじすると述のべた
・フィロラオスとヘラクレイデスを知しっており、正統的せいとうてきな立場たちばから批判ひはんした
・バデーニの開示かいじを不適切ふてきせつとして制止せいしし、引ひき取とりを求もとめた
・コルベに報告ほうこくしようとしたが、研究会けんきゅうかいの時間じかんで果はたせなかった
・ピャストに直接ちょくせつ問とわれ、聖書せいしょの読よみ方かたについて問とい返かえした
・掲示板けいじばん前まえで、主人しゅじんはいない、解答かいとうは自分じぶんのものだと名乗なのった
・ピャスト伯はくを協力者きょうりょくしゃとして紹介しょうかいすると提案ていあんした
・資料しりょうを勝手かってに閲覧えつらんしたことを自みずから明あかした
この話はなしではまだ書かいてはいけないこと・第だい9話きゅうわ以降いこうの展開てんかい・行動こうどう・運命うんめいの一切いっさい
・コルベへの報告ほうこくがどうなるか
・彼女かのじょが地動説ちどうせつの研究けんきゅうにどう関かかわるか
・母ははや家族構成かぞくこうせいに関かんする第だい7話ななわ・第だい8話はちわで語かたられていない情報じょうほう

教授きょうじゅ(ピャストの回想かいそう)

項目こうもく内容ないよう
日本語にほんご表記ひょうき教授きょうじゅ(第だい8話はちわで固有名こゆうめいは明あかされない)
中文ちゅうぶん表記ひょうき──
English──
声優せいゆう未確認みかくにん
立場たちばピャストの遠縁とおえん(いとこ違ちがい)にあたる人物じんぶつ。巨大きょだいな天文てんもん施設しせつを主宰しゅさいしていた。一族いちぞくのはぐれ者ものと自称じしょうする
性格せいかく率直そっちょくで豪快ごうかい。能力のうりょくを認みとめた相手あいてには惜おしみなく与あたえる
背景はいけい異教徒いきょうとの知恵ちえを借かり、秘密裏ひみつりに職人しょくにんに金属きんぞくのアストロラーベを作つくらせた
思想しそう学術がくじゅつ発展はってんには無謀むぼうさが重要じゅうようである。現状げんじょうの宇宙うちゅうには誤差ごさがあり、神かみが創つくった世界せかいにそれは許ゆるせない。だから修正しゅうせいして完成かんせいさせる、自分じぶん一人ひとりで。膨大ぼうだいな記録きろくは自分じぶんだけが閲覧えつらんできる。優すぐれた道具どうぐは優すぐれた能力のうりょくの人間にんげんに使つかわれるべきである
この話はなしまでに明あかされた事実じじつ・ピャストに金属きんぞくアストロラーベを与あたえた
・「宇宙うちゅうの完成かんせい」を研究けんきゅう目的もくてきとして掲かかげた
・記録きろくの独占どくせんを明言めいげんした
・ピャストに、夜空よぞらを眺ながめれば歴史れきしが変かわると告つげた
この話はなしではまだ書かいてはいけないこと・氏名しめい・その後ごの消息しょうそく・生死せいし
・彼かれの研究けんきゅうがどうなったか
・第だい9話きゅうわ以降いこうの言及げんきゅう

ピャストの父ちち(回想かいそう)

項目こうもく内容ないよう
日本語にほんご表記ひょうきピャストの父ちち(固有名こゆうめいは明あかされない)
中文ちゅうぶん表記ひょうき──
English──
声優せいゆう未確認みかくにん
立場たちばピャスト家けの当主とうしゅと思おもわれる
性格せいかく天文てんもんを下等かとうな学問がくもんと見みなし、息子むすこを強つよく否定ひていする
背景はいけい第だい8話はちわでは明あかされない
思想しそうピャスト家けに生うまれながら下等かとうな天文てんもんなど学まなぶべきではない。夜空よぞらを眺ながめて歴史れきしが変かわるはずがない
この話はなしまでに明あかされた事実じじつ・息子むすこに、もう帰かえってこなくていい、一族いちぞくの恥はじだと告つげた
この話はなしではまだ書かいてはいけないこと・氏名しめい・その後ごの消息しょうそく
・和解わかいの有無うむ
・第だい9話きゅうわ以降いこうの言及げんきゅう

バデーニ/オクジー/コルベ(継続けいぞく)

項目こうもく内容ないよう
扱あつかい第だい6話ろくわ・第だい7話ななわの人物じんぶつカードを継承けいしょうし、以下いかを追記ついきする
バデーニ・第だい8話はちわで明あかされた事実じじつ・唯名論ゆいめいろん者しゃであり、アベラールを支持しじすると述のべた
・ヨレンタが解答かいとう者しゃだと見抜みぬき、女性じょせいは密告みっこくしにくいと計算けいさんした
・後あとに、密告みっこくしない根拠こんきょを「研究者けんきゅうしゃだから」と述のべ直なおした
・ヨレンタに地動説ちどうせつを開示かいじし、拒絶きょぜつされた
・ピャスト伯はくへの接触せっしょくを無謀むぼうとして一度いちど拒否きょひし、承諾しょうだくした
・捕つかまった場合ばあいは魔女まじょに騙だまされたと密告みっこくすると述のべた
・ピャストに、アリスタルコスを引ひき継つぐ研究けんきゅうだと説明せつめいし、記録きろくの貸与たいよを求もとめた
オクジー・第だい8話はちわで明あかされた事実じじつ・ヨレンタに自己じこ紹介しょうかいした
・バデーニの計算けいさんを酷こくだと評ひょうした
・バデーニによって「とてもいい目めを持もっている」とピャストに紹介しょうかいされた
コルベ・第だい8話はちわで明あかされた事実じじつ・第だい8話はちわでは登場とうじょうせず、ヨレンタが報告ほうこくしようとした対象たいしょうとして言及げんきゅうされるのみ
この話はなしではまだ書かいてはいけないこと・第だい9話きゅうわ以降いこうの展開てんかい・運命うんめい
・バデーニの眼帯がんたいの下したの状態じょうたい
・魔女まじょに騙だまされたという密告みっこく計画けいかくが実行じっこうされるか否いなか
・ヨレンタとコルベの関係かんけいがどうなるか
・第だい4話よんわ〜第だい7話ななわの各かくゲートをそのまま継承けいしょうする
附ふ・語ご

付録ふろく1 学術がくじゅつ語彙ごい表ひょう

日本語にほんご中文ちゅうぶんEnglish分類ぶんるい
天動説てんどうせつ地心说geocentrism天文てんもん
地動説ちどうせつ日心说heliocentrism天文てんもん
惑星わくせい行星planet天文てんもん
中心火ちゅうしんか中央火ちゅうおうかthe central fire天文てんもん
対地星たいちせい対地星たいちせいcounter-earth/antichthon天文てんもん
観測かんそく記録きろく观测记录observational record天文てんもん
アストロラーベ星盘astrolabe天文てんもん
四分儀しぶんぎ象限仪quadrant天文てんもん
観測かんそく精度せいど观测精度observational accuracy天文てんもん
誤差ごさ误差error天文てんもん
周転しゅうてん円えん本轮epicycle天文てんもん
楕円だえん軌道きどう椭圆轨道elliptical orbit天文てんもん
混成こんせい体系たいけい訳語やくご未確定みかくていgeo-heliocentric system天文てんもん
月上界げつじょうかい月つき上じょう世界せかいsuperlunary realm天文てんもん
月下界げっかかい月下げっか世界せかいsublunary realm天文てんもん
普遍ふへん論争ろんそう共相之争the problem of universals哲学てつがく・思想しそう
普遍ふへん共相きょうそうuniversal哲学てつがく・思想しそう
個物こぶつ殊相しゅそう/个别事物particular哲学てつがく・思想しそう
実在論じつざいろん实在论realism哲学てつがく・思想しそう
唯名論ゆいめいろん唯名论nominalism哲学てつがく・思想しそう
概念論がいねんろん概念论conceptualism哲学てつがく・思想しそう
オッカムの剃刀かみそり奥卡姆剃刀Occam's razor哲学てつがく・思想しそう
寓意ぐうい的てき解釈かいしゃく寓意解经allegorical interpretation哲学てつがく・思想しそう
逐語ちくご的てき解釈かいしゃく字面解经literal interpretation哲学てつがく・思想しそう
解釈学かいしゃくがく诠释学hermeneutics哲学てつがく・思想しそう
理論りろん負荷ふか性せい观察渗透理论theory-ladenness哲学てつがく・思想しそう
データの理論りろん独立性どくりつせい訳語やくご未確定みかくていtheory-independence of data哲学てつがく・思想しそう
反証はんしょう证伪falsification哲学てつがく・思想しそう
変則へんそく事例じれい反はん常つねanomaly哲学てつがく・思想しそう
手段しゅだんと目的もくてき手段しゅだん与よ目的もくてきmeans and ends哲学てつがく・思想しそう
道具どうぐ的てき合理性ごうりせい工具こうぐ理性りせいinstrumental rationality哲学てつがく・思想しそう
原罪げんざい原罪げんざいoriginal sin宗教しゅうきょう・制度せいど
傲慢ごうまん傲慢ごうまんsuperbia/pride宗教しゅうきょう・制度せいど
七ななつの罪源ざいげん七宗罪しちしゅうざいthe seven deadly sins宗教しゅうきょう・制度せいど
賜物たまもの恩赐talent/gift宗教しゅうきょう・制度せいど
異端いたん异端heresy宗教しゅうきょう・制度せいど
破門はもん绝罚excommunication宗教しゅうきょう・制度せいど
異端いたん審問しんもん异端审判the Inquisition宗教しゅうきょう・制度せいど
魔女まじょ狩かり猎巫witch-hunt宗教しゅうきょう・制度せいど
『魔女まじょに与あたえる鉄槌てっつい』《女巫之锤》Malleus Maleficarum宗教しゅうきょう・制度せいど
副ふく助祭じょさい副ふく助祭じょさいsubdeacon宗教しゅうきょう・制度せいど
修道院しゅうどういん修道院しゅうどういんmonastery宗教しゅうきょう・制度せいど
左遷させん贬谪demotion/transfer as discipline宗教しゅうきょう・制度せいど
密告みっこく告发denunciation宗教しゅうきょう・制度せいど
学術がくじゅつ後援こうえん学术赞助patronage宗教しゅうきょう・制度せいど
貴族きぞく贵族nobility宗教しゅうきょう・制度せいど
伯はく(伯爵はくしゃく)伯爵はくしゃくcount宗教しゅうきょう・制度せいど
身分制みぶんせい等级制度estates of the realm宗教しゅうきょう・制度せいど
識字しきじ识字literacy宗教しゅうきょう・制度せいど
写本しゃほん手抄しゅしょう本ほんmanuscript宗教しゅうきょう・制度せいど
記録きろくの私有しゆう────宗教しゅうきょう・制度せいど(本ほんノートの記述きじゅつ語ご)

※訳語やくご未確定みかくてい:「混成こんせい体系たいけい(geo-heliocentric system)」「データの理論りろん独立性どくりつせい」の中文ちゅうぶん訳やくは学術がくじゅつ上じょうの定訳ていやくを確認かくにんできなかった。組くみ手ては訳やくさないこと。頁ページ上じょうでは日本語にほんごと English のみを表示ひょうじする。※「対地星たいちせい」は日本語にほんご・中文ちゅうぶんで同どう表記ひょうきとなる。併記へいきのまま扱あつかうこと。※「記録きろくの私有しゆう」は本ほんノートが分析ぶんせきのために用もちいる記述きじゅつ語ごであり、確立かくりつした学術がくじゅつ用語ようごではない。中文ちゅうぶん・English 欄らんは空そらとし、マーカーを付ふさないこと。

附ふ・引ひき

付録ふろく3 引用いんよう行ぎょうと経過けいか時間じかんの対応表たいおうひょう

照合しょうごう方法ほうほう:字幕じまく書かき起おこし(SRT、全ぜん1731行ぎょう)と全ぜん行ぎょうを突つき合あわせ、語尾ごびまで一致いっちを確認かくにん済ずみ。

節せつ引用いんよう行ぎょう経過けいか時間じかん話者わしゃ
1章いっしょうほら ここ 男性名だんせいめい 男性名だんせいめい00:14ヨレンタ
3-1唯名論ゆいめいろんです アベラールを支持しじします03:07バデーニ
3-1オッカムは少々しょうしょう過激かげきでは?03:17バデーニ
1章いっしょう真理しんりの探究たんきゅうには ある種しゅの大胆だいたんさは不可欠ふかけつかと03:19ヨレンタ
3-2女性じょせいだからだ04:10バデーニ
3-2密告みっこくしたら 自分自身じぶんじしんも魔女まじょ扱あつかいされる可能性かのうせいが非常ひじょうに高たかい04:12バデーニ
3-2それが現実げんじつだ04:21バデーニ
1章いっしょう宇宙うちゅうの中心ちゅうしんには 中心火ちゅうしんかなる謎なぞの火ひがあり05:48バデーニ
3-3地球ちきゅうが宇宙うちゅうの中心ちゅうしんにはりつけになってるのは06:35ヨレンタ
3-3原罪げんざいを背負せおった 我々われわれの宿命しゅくめいというか06:43ヨレンタ
1章いっしょう観測かんそく的てき事実じじつを基もとに仮説かせつを立たてた07:10バデーニ
3-3今いまのままでいたいですか?08:03バデーニ
3-3自由じゆうも持もってるとしたら どうします?08:12バデーニ
3-3この世界せかいは 本当ほんとうに動うごいてるとしたら どうだ?08:44バデーニ
3-3そこじゃあ 神かみは 宇宙うちゅうに階級かいきゅうなど創つくっていない08:52バデーニ
1章いっしょう我々われわれは正ただしい方向ほうこうになど導みちびかない09:08バデーニ
1章いっしょう真理しんりだ09:15バデーニ
3-4研究者けんきゅうしゃだからだ09:55バデーニ
1章いっしょう私わたしは もうじき死しぬ11:08ピャスト
1章いっしょう我々われわれだけは 真理しんりの探究たんきゅうを諦あきらめてはならん11:35ピャスト
3-5彼かれの誤あやまりは 太陽たいように挑いどんだ傲慢ごうまんさではない11:53ピャスト
3-5蝋ろうが溶とけるという父ちちの警告けいこくを軽かろんじた無知むちにある11:58ピャスト
3-5我々われわれは 蝋ろうでダメなら鋼はがねの翼つばさを作つくり12:03ピャスト
1章いっしょうあと一歩いっぽ 足たりていないのは その無謀むぼうさだ12:12ピャスト
1章いっしょうイカロスにならねば12:19ピャスト
3-6“女おんなは黙だまって学まなぶべきで 教おしえるべきではない”13:31ピャスト
3-7それは本当ほんとうに 真理しんりなのでしょうか13:48ヨレンタ
3-7聖書せいしょは真理しんりだ13:54ピャスト
3-7今いまの我々われわれに 正ただしい読よみ方かたができているかは分わからない14:01ピャスト
1章いっしょうコルベではなく 私わたしにな14:16ピャスト
1章いっしょう主人しゅじんは いません14:52ヨレンタ
1章いっしょう私わたしのものです15:04ヨレンタ
1章いっしょう大地だいちを動うごかす無謀むぼうさに比くらべたら ささいなことでは?16:57ヨレンタ
1章いっしょうでも きっと それよりも 真理しんりを重おもんじてる17:10ヨレンタ
6章ろくしょうもし捕つかまっても 魔女まじょにだまされたと密告みっこくする17:28バデーニ
1章いっしょうアリスタルコスを引ひき継つぐものです18:09バデーニ
3-8私わたしの人生じんせいを懸かけた研究けんきゅうが 間違まちがいだと主張しゅちょうするものだぞ18:47ピャスト
3-8ですが 真理しんりかもしれません18:56バデーニ
3-8それを求もとめて 人生じんせいをささげたのでしょう?18:59バデーニ
1章いっしょうお前まえは一族いちぞくの恥はじだ19:43ピャストの父ちち
1章いっしょう無謀むぼうさです20:59ピャスト(回想かいそう)
1章いっしょう宇宙うちゅうの完成かんせいだよ21:39教授きょうじゅ
6章ろくしょう私わたしが1人ひとりでだ21:59教授きょうじゅ
6章ろくしょう優すぐれた道具どうぐは 優すぐれた能力のうりょくの人間にんげんに使つかわれるべきだ22:47教授きょうじゅ
1章いっしょう君きみが夜空よぞらを眺ながめれば 歴史れきしが変かわると23:11教授きょうじゅ
10章じっしょう宇宙うちゅうを完成かんせいさせねば23:25ピャスト

※ルビ表記ひょうき:「蝋ろうろう」は字幕じまく上じょうのルビ。頁ページではルビとして組くむこと。※第だい7話ななわとの対比たいひ:「私わたしのものではないです」(第だい7話ななわ 18:53)と「私わたしのものです」(第だい8話はちわ 15:04)は対たいをなす。SVG-E8-07 および第だい10章じっしょうで対比たいひする際さい、両者りょうしゃの話はなし数すうと経過けいか時間じかんを取とり違ちがえないこと。※題名だいめいの表記ひょうきは「イカロスにならねば」。作中さくちゅうの台詞せりふも同一どういつ(12:19)である。

附ふ・出で

付録ふろく4 出典しゅってん

作品さくひん資料しりょう

資料しりょう版はん・話はなし数すう・確認日かくにんび
アニメ『チ。―地球ちきゅうの運動うんどうについて―』第だい8話はちわ「イカロスにならねば」NHK総合そうごう、2024年ねん11月じゅういちがつ放送ほうそう/字幕じまく書かき起おこし(SRT、全ぜん1731行ぎょう)を一次いちじ資料しりょうとして使用しよう。確認日かくにんび:2026年ねん8月はちがつ15日じゅうごにち
Seven Seas Entertainment(英語えいご版はん)シリーズ頁ページhttps://sevenseasentertainment.com/series/orb-on-the-movements-of-the-earth-omnibus/ /確認日かくにんび:2026年ねん8月はちがつ15日じゅうごにち
Behind The Voice Actors(英語えいご版はん役名やくめい・声優せいゆう)https://www.behindthevoiceactors.com/tv-shows/Orb-On-the-Movements-of-the-Earth/ /確認日かくにんび:2026年ねん8月はちがつ15日じゅうごにち

一次いちじ文献ぶんけん

文献ぶんけんどの章しょうのどの主張しゅちょうを支ささえるか
ピエール・アベラール『論理学ろんりがく』ほか普遍ふへん論争ろんそう関連かんれん著作ちょさく「世よ」の章しょう・第だい3-1節いっせつ。普遍ふへんをめぐる立場たちばと、その分類ぶんるいの難むずかしさ(確度かくど:定説ていせつ。ただし彼かれを唯名論ゆいめいろんに分類ぶんるいすることは確度かくど:議論ぎろんあり)
ウィリアム・オブ・オッカム『大論だいろん理学りがく』ほか「世よ」の章しょう・第だい3-1節いっせつ。唯名論ゆいめいろんの代表的だいひょうてき定式化ていしきか。オッカムの剃刀かみそり(確度かくど:定説ていせつ)
オウィディウス『変身へんしん物語ものがたり』第だい8巻はっかん第だい3-5節ごせつ。イカロスの神話しんわの典拠てんきょ。ダイダロスの警告けいこくに中庸ちゅうようの含ふくみがあること(確度かくど:定説ていせつ)
テモテへの第一だいいちの手紙てがみ 2章にしょう11〜12節じゅうにせつ第だい3-6節ろくせつ。ピャストが引ひいた聖書せいしょの記述きじゅつの典拠てんきょ(確度かくど:定説ていせつ)
ハインリヒ・クラーマー『魔女まじょに与あたえる鉄槌てっつい』(1487)第だい3-2節にせつ・第だい3-6節ろくせつ。女性じょせいへの嫌疑けんぎの体系化たいけいか(確度かくど:定説ていせつ)
アウグスティヌス『創世記そうせいき逐語ちくご解かい』第だい3-7節ななせつ。確実かくじつな自然しぜん認識にんしきと聖書せいしょ解釈かいしゃくが衝突しょうとつする場合ばあい、解釈かいしゃくの側がわを再検討さいけんとうすべきとする立場たちば(確度かくど:定説ていせつ)
フィロラオス/アリスタルコスに関かんする古代こだいの言及げんきゅう(アルキメデス『砂すなの計算けいさん者しゃ』ほか)第だい1章いっしょう・第だい4章よんしょう。中心火ちゅうしんかの説せつと、アリスタルコスの幾何学きかがく的てき手法しゅほう(確度かくど:定説ていせつ)

研究けんきゅう文献ぶんけん

文献ぶんけんどの章しょうのどの主張しゅちょうを支ささえるか/学界がっかいでの位置いち
普遍ふへん論争ろんそうに関かんする研究けんきゅう(アベラールの立場たちばを概念論がいねんろんとする分類ぶんるいを含ふくむ)「世よ」の章しょう・第だい3-1節いっせつ。中世ちゅうせい哲学てつがくにおける普遍ふへんの位置いちづけと、アベラールの分類ぶんるいをめぐる議論ぎろん(確度かくど:定説ていせつ。アベラールの分類ぶんるいのみ確度かくど:議論ぎろんあり)
ティコ・ブラーエに関かんする研究けんきゅう https://www2.hao.ucar.edu/education/scientists/tycho-brahe-1546-1601 / https://www.astronomy.ohio-state.edu/thompson.1847/1101/lecture_tycho_kepler.html第だい3-8節はっせつ・第だい4章よんしょう・第だい5章ごしょうの中核ちゅうかく。望遠鏡ぼうえんきょう以前いぜんで最高さいこう精度せいどの記録きろく、地球ちきゅう中心ちゅうしんの混成こんせい体系たいけいの提唱ていしょう、記録きろくがケプラーに渡わたり三さん法則ほうそくの基礎きそになったこと(確度かくど:定説ていせつ。臨終りんじゅうの言葉ことばの伝承でんしょうのみ確度かくど:有力ゆうりょく説せつ)
ティコの星表せいひょうの精度せいどに関かんする定量ていりょう研究けんきゅう https://arxiv.org/pdf/1707.01020第だい5章ごしょう。観測かんそく精度せいどの水準すいじゅんに関かんする裏うらづけ(確度かくど:定説ていせつ)
ケプラー『新しん天文学てんもんがく』(1609)に至いたる過程かていの研究けんきゅう第だい5章ごしょう。ティコの記録きろくが楕円だえん軌道きどうの発見はっけんに果はたした役割やくわり(確度かくど:定説ていせつ)
イカロス神話しんわの受容じゅよう史しに関かんする研究けんきゅう(傲慢ごうまんの寓意ぐういとしての標準的ひょうじゅんてき読解どっかい)第だい3-5節ごせつ。中世ちゅうせいを通つうじた寓意ぐうい的てき読解どっかいの伝統でんとう(確度かくど:定説ていせつ)
学術がくじゅつ後援こうえん(パトロネージ)と記録きろくの私有しゆうに関かんする科学史かがくし研究けんきゅう第だい5章ごしょう・第だい6章ろくしょう。記録きろくの蓄積ちくせきが権威けんいと収入しゅうにゅうの源泉げんせんであったこと(確度かくど:定説ていせつ)