Note 10 — 第だい2篇へん

The Odyssey ── 第だい1部いちぶ [ Ithacaの危機ききとTelemachusの出で立りつ ]

第だい1部いちぶは、歓待かんたいの掟おきてに縛しばられたIthacaの家いえと、出征しゅっせい前まえの夫婦ふうふの約束やくそく(弓ゆみ・留とめ針ばり・西にしへの夢ゆめ)、そしてAntinousとSinonを結むすぶ籤くじを撒まく部ぶである。後あとの部ぶで回収かいしゅうされるものは、ほぼすべてここに置おかれている。

全ぜん 6 節せつ図版ずはん 3出典しゅってん 0初出しょしゅつ 2026-09-28更新こうしん 2026-09-28

第だい1部いちぶ ── Ithacaの危機ききとTelemachusの出で立りつ

原本げんぽん L54–L470発話はつわ 209場面ばめん 01〜04

第1部の場面の並び場面01Ithacaの現在62発話場面02Ithacaの現在50発話場面03Ithacaの現在60発話場面04Ithacaの現在37発話色=主な時間層 幅=発話数 赤い刻み=場面の中の切り替わり(回想・現在・並行)の数
図ず 01第だい1部いちぶの4場面ばめん。幅はばは発話はつわ数すう(この部ぶの合計ごうけい209)。
  1. 01冒頭ぼうとうの歌うた ── Trojan HorseからIthacaの宮殿きゅうでんへIthacaの現在げんざい
  2. 02Eumaeusの訓練くんれん ── Argusと徴兵ちょうへいの記憶きおくIthacaの現在げんざい
  3. 03Penelopeの織物おりもの ── 出征しゅっせい前まえの夫婦ふうふと父ちちの弓ゆみIthacaの現在げんざい
  4. 04Argusへの虐待ぎゃくたい ── Telemachusの秘密ひみつ出航しゅっこうIthacaの現在げんざい

場面ばめん01

冒頭ぼうとうの歌うた ── Trojan HorseからIthacaの宮殿きゅうでんへ

Troyの物語ものがたりを歌うたうIthacaの現在げんざい

原本げんぽん
L54–L176
発話はつわ
62
第だい1部いちぶ
1/4
  • 男おとこの声こえ
  • 男おとこの声こえ/吟遊詩人ぎんゆうしじん
  • 吟遊詩人ぎんゆうしじん
  • 第一だいいちのTroy人ひと
  • Sinon
  • 第だい二にのTroy人ひと
  • 女おんなの声こえ
  • Penelope
  • 一いち同どう
  • Telemachus
  • Polybus
  • Antinous
  • 物乞ものごい
  • Melantho
  1. 現在げんざいへTrojan Horseを歌うたう冒頭ぼうとうから、Ithacaの宮殿きゅうでんの現在げんざいへ

画面がめんの外そとから、ひとつの顔かお、ひとつの艦隊かんたい、ひとつの戦争せんそうと数かぞえ上あげる声こえが、やがて吟遊詩人ぎんゆうしじんの歌うただと分わかる。歌うたの中なかでは、Sinonが木き馬うまを「Athenaへの贈おくり物もの」だと言いい、Troy人ひとは神々かみがみへの供物くもつを敬うやまうべきだとして城じょう内ないへ引ひき入いれる。歌うたはIthacaの宮殿きゅうでんで求きゅう婚こん者しゃたちが楽らくしむ余よ興きょうで、Penelopeがそれを止とめさせる。Telemachusは三さん年ねん居い座すわる求きゅう婚こん者しゃたちに歓待かんたいの意味いみを突つきつけ、Antinousとの応酬おうしゅうの中なかで、Antinousがかつて出征しゅっせいを志願しがんしたと称しょうしていること、Zeus’s lawを守まもる一家いっかを求きゅう婚こん者しゃが嘲あざけっていることが示しめされる。最後さいごに、Spartaから来きたという物乞ものごいが、TelemachusにMenelausを訪たずねよと勧すすめる。Telemachusはその物乞ものごいの目めに「Athenaの目め」を見みる。

「私わたしはOdysseusの「歌うた」なんて欲ほしくない」Penelope
  • 歌うた
  • Trojan Horse
  • Zeus’s law
  • 食事しょくじ
  • 目め

場面ばめん02

Eumaeusの訓練くんれん ── Argusと徴兵ちょうへいの記憶きおく

Ithaca現在げんざい+短みじかい回想かいそうの反復はんぷく

原本げんぽん
L178–L276
発話はつわ
50
第だい1部いちぶ
2/4
  • Telemachus
  • Eumaeus
  • Odysseus
  • 老乳母ろううば
  • Antinousの父ちち
  1. 回想かいそうEumaeusの記憶きおく――Odysseusと若わかいArgus
  2. 現在げんざいへEumaeusがTelemachusを訓練くんれんしている場面ばめん
  3. 交差こうさEumaeusの語かたりに合あわせ、Troy遠征えんせい前まえの徴兵ちょうへいの記憶きおくへ
  4. 現在げんざいへTelemachusとEumaeus

盲目もうもくに近ちかい老ろう僕ぼくEumaeusが、音おとだけを頼たよりにTelemachusとMentorの剣けんの稽古けいこを見みる。老ろう犬いぬArgusの由来ゆらいを語かたる回想かいそうでは、若わかいOdysseusが子こ犬いぬを選えらび、弓ゆみの弦げんを弾ひいて張ばり具合ぐあいを確たしかめ、狩かりを「こっそりやる戦たたかい」と呼よぶ。現在げんざいへ戻もどり、Eumaeusは「ためらいを見みせ、相手あいての攻撃こうげきを好機こうきに変かえる」技ぎを、自分じぶんはOdysseusから教おそわったと言いう。さらにTroy遠征えんせいの徴兵ちょうへいが籤くじで行おこなわれ、Antinousの父ちちの懇願こんがんを受うけて、羊飼ひつじかいの息子むすこSinonが身代みがわりになった経緯けいいが回想かいそうで差さし込こまれる。Antinousの「志願しがんした」という話はなしは、ここで崩くずれる。

  • 籤くじ
  • 弓ゆみ
  • 記憶きおく
  • 目め
籤の糸が映画を横切る場面02Troy遠征の徴兵籤でAntinousが選ばれる。父の懇願で、Sinonが身代わりに場面12Hadesで確かめるSinonは木馬の嘘のために死に、約束は破られたと言う場面12託される籤を持っているか。Antinousに彼自身の恥を返せ場面31宴で返す物乞いが一品を差し出し、Sinonと名乗る。Hadesで、と答える場面35決着Antinousとの一騎打ち。HadesでSinonに会ったら、と言い残すHomerの『Odyssey』にこの籤の設定は無い(第1部 注7)。映画が人物関係を結ぶために置いた糸。
図ず 02籤くじの糸いと。映画えいがの最初さいしょの部ぶで撒まかれ、冥界めいかいで意味いみが確たしかめられ、宴うたげの場ばで小しょう道具どうぐとして持もち主ぬしへ返かえされる。

場面ばめん03

Penelopeの織物おりもの ── 出征しゅっせい前まえの夫婦ふうふと父ちちの弓ゆみ

Ithaca現在げんざい+Troy出征しゅっせい前まえの回想かいそう

原本げんぽん
L278–L396
発話はつわ
60
第だい1部いちぶ
3/4
  • Penelope
  • Telemachus
  • Odysseus
  1. 回想かいそうOdysseus出征しゅっせい前まえ、Penelopeとの別わかれ
  2. 現在げんざいへIthaca、PenelopeとTelemachus

Penelopeは長老ちょうろうたちが「葬衣そういが織おり上あがったら再さい婚こん」と定さだめたことを明あかし、海うみから来くる襲撃しゅうげき者しゃの噂うわさと、Ithacaに王おうがいない危あやうさを語かたる。長ながい回想かいそうで、出征しゅっせい前まえの夫婦ふうふの別わかれが描えがかれる。OdysseusはAgamemnonがHelen事件じけんを交易こうえき路ろ支配しはいの口実こうじつにしていること、娘むすめを生贄いけにえにした男おとこだから拒こばめば息子むすこが連つれていかれることを説明せつめいし、自分じぶんが帰きらなければ再さい婚こんせよと頼たのむ。Penelopeは「西にしへ逃にげる」夢ゆめを語かたって拒こばみ、旅人たびびとが夫おっとを見みたと言いったら何なにを身みにつけていたか聞きく、という確たしかめ方ほうを約束やくそくさせる。現在げんざいに戻もどると、Penelopeは弦げんを張はれと弓ゆみを差さし出だし、斧おのを並ならべて矢やを通とおした夫おっとの思おもい出でを語かたる。TelemachusはSpartaへ行いくと言いい出だし、母はは子こは王おう位いと支配しはいをめぐって激はげしく衝突しょうとつする。

「愛あいは犠牲ぎせいじゃない」Penelope
  • 弓ゆみ
  • 西にし
  • 留とめ針ばり
  • 記憶きおく
  • 制御せいぎょ

場面ばめん04

Argusへの虐待ぎゃくたい ── Telemachusの秘密ひみつ出航しゅっこう

Ithaca現在げんざい

原本げんぽん
L398–L470
発話はつわ
37
第だい1部いちぶ
4/4
  • Eumaeus
  • Melanthius
  • Polybus
  • Telemachus
  • Antinous
  • Penelope
  • 老乳母ろううば
  • Mentor
  1. 転換てんかん宮殿きゅうでん内ない――Eumaeus、Melanthius、Argus、求きゅう婚こん者しゃたち
  2. 転換てんかんTelemachus、秘密ひみつ出航しゅっこうの準備じゅんび
  3. 転換てんかん夜明よあけ前まえの船ふね着つき場ば――TelemachusとMentor

宮殿きゅうでんの広こう間かんで、牛飼うしかいMelanthiusがEumaeusを見み下くだし、求きゅう婚こん者しゃPolybusが老ろう犬いぬArgusに暴力ぼうりょくを振ふるう。止とめに入はいったTelemachusが殺ころされかけ、Penelopeが懇願こんがんし、Antinousが「慈悲じひ」を見みせる形かたちでその場ばを収おさめる。Argusは表ひょうの糞ふんの山やまへ出だされる。その夜よるTelemachusは老乳母ろううばに物資ぶっしを用意よういさせ、母ははには陸りくが見みえなくなるまで黙だまっているよう頼たのむ。夜明よあけ前まえの船ふね着つき場ばで、TelemachusはMentorの目めにも「Athenaの目め」を見みて、父ちちを探さがしに出でる。

  • 食事しょくじ
  • Zeus’s law
  • 目め
宮殿の中の力関係(場面04の時点)家の側PenelopeTelemachusEumaeusArgus老乳母寝返った使用人MelanthoMelanthius使用人の半分求婚者AntinousPolybusほか多数離反内通Zeus’s lawがある限り、家の側は客を追い出せない。追い出せば、それが求婚者の「口実」になる。長老たちは葬衣の完成を再婚の時と定め、王の不在と「海の民」の噂が再婚を急がせる。
図ず 03場面ばめん04の時点じてんの宮殿きゅうでん。家いえの側がわは歓待かんたいの掟おきてに縛しばられて手てが出だせず、使用しよう人ひとの半分はんぶんはすでに求きゅう婚こん者しゃについている。

原典げんてん・神話しんわ・歴史れきし背景はいけいの詳細しょうさい補足ほそく

ここからは台だい本ほん本文ほんぶんそのものではありません。 原典げんてん比較ひかく・神話しんわ伝承でんしょう・歴史れきし考古学こうこがく・翻訳ほんやく上じょうの注意ちゅういを補おぎなうための解説かいせつです。台だい本ほんに明示めいじされない内容ないようは、本文ほんぶんと区別くべつして読よめるようにしています。

注ちゅう1 「Zeus’s law」と xenia(客人きゃくじん歓待かんたい)

映画えいがで反復はんぷくされる “Zeus’s law” は、Homer世界せかいの xenia(ξενία)、すなわち「客人きゃくじん・旅人たびびと・物乞ものごいを保護ほごし、食事しょくじや安全あんぜんを与あたえる相互そうご的てきな歓待かんたい規範きはん」を、物語ものがたり上じょう分わかりやすく一本いっぽんの「法ほう」として言語化げんごかしたものと考かんがえると理解りかいしやすい。

『Odyssey』では、見知みしらぬ旅人たびびとを先さきに迎むかえ入いれ、食たべさせてから身元みもとを尋たずねる行為こういが繰くり返かえされる一方いっぽう、求きゅう婚こん者しゃたちはOdysseusの家いえの富とみを長期間ちょうきかん食しょくい潰つぶし、歓待かんたいを「受うける側がわ」の権利けんりだけとして濫用らんようする。したがって本作ほんさくが「歓待かんたいの崩壊ほうかい=文明ぶんめい秩序ちつじょの崩壊ほうかい」という主題しゅだいを強つよく打うち出だすのは、原典げんてんに存在そんざいする倫理的りんりてき構造こうぞうを大幅おおはばに拡張かくちょうしたものといえる。

注ちゅう2 「Troy陥落かんらくから八はち年ねん」――原典げんてんとの年代ねんだい差さ

この脚あし本ほんではPenelopeが「Troy陥落かんらくから八はち年ねん」「出征しゅっせいからほぼ二十にじゅう年ねん」と述のべる。Homerの伝統的でんとうてきな理解りかいでは、Trojan Warがおよそ十じゅう年ねん、Odysseusの帰還きかんまでさらにおよそ十じゅう年ねんで、合計ごうけい約やく二十にじゅう年ねんの不在ふざいである。

したがって、映画えいがの「八はち年ねん」は古典こてんの標準的ひょうじゅんてき年代ねんだい設定せっていと完全かんぜんには一致いっちしない。これは映画えいが独自どくじの時間じかん構成こうせい、または書かき起おこし段階だんかいの表記ひょうき差さである可能性かのうせいがあるため、訳やくでは原文げんぶんどおり「八はち年ねん」とした。

注ちゅう3 Penelopeの「葬衣そうい」

この場面ばめんは原典げんてんに直接ちょくせつ対応たいおうする。『Odyssey』第だい2歌うたでは、PenelopeはOdysseusの父ちち Laertes のための葬衣そういを完成かんせいさせるまでは再さい婚こんしないと求きゅう婚こん者しゃたちに告つげ、昼ひるに織おった布ぬのを夜よるごとほどくことで約やく三さん年間ねんかん、再さい婚こんを引ひき延のばす。

映画えいがでは「長老ちょうろうたちが、葬衣そういの完成かんせいを再さい婚こんの時ときと定さだめた」という政治せいじ制度せいど的てきな説明せつめいが加くわえられている。これは原典げんてんそのままではなく、Ithacaの統治とうち危機ききを強調きょうちょうする脚あし色いろである。

注ちゅう4 「海うみの民たみ」と後期こうき青銅器せいどうき時代じだい崩壊ほうかい

Sea Peoples(海うみの民たみ) はHomerの『Odyssey』に登場とうじょうする固有こゆう集団しゅうだんではない。これは近代きんだいのエジプト学がく・考古学こうこがくで、前まえ13~12世紀じゅうにせいきごろ東ひがし地中海ちちゅうかい世界せかいを襲撃しゅうげき・移動いどうした複数ふくすう集団しゅうだんをまとめて呼よぶ便宜的べんぎてき名称めいしょうである。

後期こうき青銅器せいどうき時代じだい末まつには、Mycenaeの宮殿きゅうでん社会しゃかい、ヒッタイト帝国ていこくなど東ひがし地中海ちちゅうかいの政治せいじ・交易こうえきシステムが大おおきく崩壊ほうかいし、ギリシアでは宮殿きゅうでん行政ぎょうせいと線せん文字もじBによる書記しょき文化ぶんかも失うしなわれていく。ただし、これを「海うみの民たみという一いち勢力せいりょくが文明ぶんめいを破壊はかいした」と単一たんいつ原因げんいんで説明せつめいするのは現在げんざいでは単純化たんじゅんかが過すぎ、戦争せんそう、人口じんこう移動いどう、交易こうえき網もうの断絶だんぜつ、政治的せいじてき不安定ふあんてい、気候きこう要因よういんなど複数ふくすうの要素ようそが議論ぎろんされている。

Nolan版はんは、この実在じつざいする歴史的れきしてき崩壊ほうかいを、Odysseus個人こじんの倫理的りんりてき失敗しっぱいと「Zeus’s law」の崩壊ほうかいへ結むすびつける構造こうぞうを採とっている。

注ちゅう5 「Troyの交易こうえき路ろ支配しはい」

Odysseusが「Agamemnonは、Troyの交易こうえき路ろ支配しはいを破やぶる口実こうじつとしてHelen事件じけんを利用りようしている」と語かたる部分ぶぶんは、映画えいが独自どくじの地政ちせい学がく的てき解釈かいしゃくが強つよい。

Homer叙事詩じょじしにおける戦争せんそうの直接的ちょくせつてきな物語ものがたり上じょうの原因げんいんは、ParisによるHelenの連つれ去さり/駆かけ落おちと、それをめぐるアカイア勢いきおいの遠征えんせいであり、「海上かいじょう交易こうえき路ろの支配権しはいけん奪取だっしゅ」がAgamemnonの明示めいじ的てき目的もくてきとして語かたられるわけではない。

注ちゅう6 Iphigeniaの犠牲ぎせい

「Agamemnonが順じゅん風かぜを得えるため娘むすめを生贄いけにえにした」というのは、Iphigenia(Iphigenia) の物語ものがたりである。アウリスに集しゅう結けつしたギリシア艦隊かんたいが風かぜを得えるため、Agamemnonが娘むすめをArtemisに捧ささげるという伝承でんしょうは、後代こうだいの叙事詩環じょじしかん・悲劇ひげき、とりわけAeschylusやEuripidesで大おおきく展開てんかいされる。

映画えいがはこの伝承でんしょうを、Agamemnonが「目的もくてきのためなら自分じぶんの家族かぞくすら犠牲ぎせいにする人物じんぶつ」であることを一行いちぎょうで示しめす材料ざいりょうとして使つかっている。

注ちゅう7 Antinous、Sinon、徴兵ちょうへいくじ

AntinousがTroy遠征えんせいに選えらばれ、Sinonが身代みがわりになったという設定せってい、Odysseusが兵へいを「くじ」で徴集ちょうしゅうしたという設定せっていは、少すくなくともHomer『Odyssey』の中心ちゅうしん的てき伝承でんしょうには存在そんざいせず、この映画えいがの人物じんぶつ関係かんけいを結むすびつけるための独自どくじ再構成さいこうせいと見みるべきである。

特とくに Sinon は「Trojan Horse」の欺瞞ぎまんを成立せいりつさせる人物じんぶつとして後世こうせいのTrojan War伝承でんしょうで有名ゆうめいだが、映画えいがは彼かれをAntinousの過去かこ、Odysseusの罪悪ざいあく感かん、冥府めいふの場面ばめんへ一本いっぽんにつなぐ重要人物じゅうようじんぶつに再さい設計せっけいしている。

注ちゅう8 父ちちの弓ゆみと十二じゅうに本ほんの斧おの

Penelopeが示しめす「Odysseusだけが扱あつかえた弓ゆみ」と、斧おのを並ならべて矢やを通とおす試練しれんは、原典げんてん『Odyssey』第だい21歌うたに直接ちょくせつ対応たいおうする。原典げんてんではPenelopeが求きゅう婚こん者しゃたちに、Odysseusの弓ゆみを張ばり、十二じゅうにの斧おのを通とおして矢やを射しゃ抜ぬけた者ものと結婚けっこんすると告つげる。

この第だい01部いちぶではまだ試練しれんそのものは行おこなわれないが、映画えいがはかなり早はやい段階だんかいで弓ゆみを見みせることで、終盤しゅうばんの決着けっちゃくを視覚的しかくてきに伏線ふくせん化かしている。

注ちゅう9 「Athenaの目め」

Telemachusが物乞ものごいとMentorの双方そうほうに「Athenaの目め」を感かんじる台詞せりふは、原典げんてんへの強つよい目め配はいせである。『Odyssey』ではAthenaが人間にんげんの姿すがたを取とり、とりわけ Mentor(Mentor) の姿すがたを借かりてTelemachusを導みちびく。

映画えいがは「本当ほんとうに神かみなのか/人間にんげんの中なかに神かみ性せいを見みているだけなのか」を曖昧あいまいに保たもつことで、神々かみがみを超ちょう自然しぜん的てき存在そんざいとしてだけでなく、人間にんげんが世界せかいの出来事できごとに読よみ込こむ「意味いみ」としても描えがこうとしている。


参照さんしょう資料しりょう(外部がいぶ補足ほそくの根拠こんきょ)


翻訳ほんやく上じょうの注記ちゅうき

  1. 訳やく注ちゅう1 原文げんぶんは “Common Gods. Respect their offering.”。英語えいごとしてやや不自然ふしぜんで、書かき起おこし誤あやまりの可能性かのうせいがある。「神々かみがみは我々われわれにも共通きょうつうする存在そんざいなのだから、彼かれらの供物くもつを尊重そんちょうせよ」という意味いみに取とるのが最もっとも文脈ぶんみゃくに合あうため、その方向ほうこうで訳やくした。(場面ばめん 01・原本げんぽんL74 の発話はつわへの注ちゅう)
  2. 訳やく注ちゅう2 この数字すうじはHomerの一般的いっぱんてきな「戦争せんそう10年じゅうねん+帰還きかん10年じゅうねん」という時間じかん枠わくとずれる。後続こうぞく台詞せりふの年数ねんすうとも照合しょうごうし、最終さいしゅうフェーズで映画えいが内ない時系列じけいれつを別途べっと整理せいりする。(場面ばめん 01・原本げんぽんL100 の発話はつわへの注ちゅう)