Note 10 — 第だい6篇へん

The Odyssey ── 第だい5部ぶ [ Ithacaの陰謀いんぼう、Sirens、Scylla、Thrinacia、Calypso ]

第だい5部ぶは予言よげんが一ひとつずつ成就じょうじゅしていく部ぶである。Sirens、Scylla、Thrinaciaを経へて、Odysseusは制御せいぎょを手放てばなすことを学まなび、Ogygiaでの七なな年ねんがようやく明あかされる。

全ぜん 9 節せつ図版ずはん 5出典しゅってん 0初出しょしゅつ 2026-09-28更新こうしん 2026-09-28

第だい5部ぶ ── Ithacaの陰謀いんぼう、Sirens、Scylla、Thrinacia、Calypso

原本げんぽん L1156–L1478発話はつわ 162場面ばめん 16〜22

第5部の場面の並び場面16Ithacaの現在39発話場面17Telemachusの旅24発話場面18Ogygiaの現在4発話場面19Odysseusの記憶12発話場面20Odysseusの記憶26発話場面21Odysseusの記憶33発話場面22Ogygiaの現在24発話色=主な時間層 幅=発話数 赤い刻み=場面の中の切り替わり(回想・現在・並行)の数
図ず 01第だい5部ぶの7場面ばめん。幅はばは発話はつわ数すう(この部ぶの合計ごうけい162)。
  1. 16Ithaca ── PenelopeとAntinous、殺害さつがい計画けいかくIthacaの現在げんざい
  2. 17Sparta ── Agamemnonの運命うんめいとTelemachusの決断けつだんTelemachusの旅たび
  3. 18Ogygia ── Sirensの記憶きおくが開ひらくOgygiaの現在げんざい
  4. 19Sirens ── 欲望よくぼうと喪失そうしつの歌うたOdysseusの記憶きおく
  5. 20CharybdisとScylla ── 六ろく人ひとを失うしなう選択せんたくOdysseusの記憶きおく
  6. 21Thrinacia ── Heliosの牛うしと乗組員のりくみいんの破滅はめつOdysseusの記憶きおく
  7. 22Ogygia ── 七なな年間ねんかんの告白こくはくと「制御せいぎょを手放てばなす」教おしえOgygiaの現在げんざい

場面ばめん16

Ithaca ── PenelopeとAntinous、殺害さつがい計画けいかく

Ithaca現在げんざい

原本げんぽん
L1156–L1232
発話はつわ
39
第だい5部ぶ
1/7
  • Penelope
  • Antinous
  • Melantho
  • Polybus
  • Eumaeus
  • Melanthius
  • Irus
  1. 転換てんかんMelanthoがTelemachusの出航しゅっこうを暴露ばくろ
  2. 転換てんかんEumaeusとMelanthius――盗ぬすみ聞ぎきと排除はいじょ

宮殿きゅうでんで、Antinousが衝しょう立りつ越ごしにPenelopeへ言いい寄よる。彼かれは織物おりものを毎晩まいばんほどいていることを知しっており、Melanthoが自分じぶんの側がわについていることをほのめかす。Odysseusは帰きらない、Telemachusの王おう位いは二人ふたりに子こが生うまれなければ守まもられる、と取引とりひきを持もちかける。Penelopeは息子むすこは祖父そふに会あいに内陸ないりくへ行おこなったと偽にせるが、Melanthoが海うみへ出でたと暴露ばくろする。立たち聞ききしていたEumaeusはMelanthiusに見みつかり締しめ出だされる。AntinousとPolybusは、帰路きろのTelemachusを街まち道みちで殺ころす計画けいかくを立たて、Irusの一いち味あじに目撃者もくげきしゃを残のこさず始し末まつさせることにする。

  • Zeus’s law
  • 正体しょうたい
  • 食事しょくじ

場面ばめん17

Sparta ── Agamemnonの運命うんめいとTelemachusの決断けつだん

Telemachusの旅たび

原本げんぽん
L1234–L1280
発話はつわ
24
第だい5部ぶ
2/7
  • Menelaus
  • Telemachus
  1. 転換てんかんSparta――MenelausとTelemachus

Spartaで、MenelausはTelemachusの狩かりの腕うでを褒ほめ、豚飼ぶたかいに教おそわったと聞きいて感心かんしんする。Agamemnonは妻つまに裏切うらぎられて殺ころされ、息子むすこOrestesが二人ふたりとも殺ころして仇かたきを討うったと明あかされ、Telemachusは母はは殺ころしに愕然がくぜんとする。王おう座ざを空あけておくには悪わるい時代じだいだという話はなしから、Menelausは、客人きゃくじんを殺ころさずにZeus’s lawを破やぶらずに求きゅう婚こん者しゃを追おい出だす道みちを示唆しさする。Telemachusは自分じぶんが王おう位いにつくしかないと悟さとる。これは会あったこともない父ちちのための話はなしではない、とMenelausは言いう。

  • Zeus’s law
  • 死者ししゃ
  • 正体しょうたい

場面ばめん18

Ogygia ── Sirensの記憶きおくが開ひらく

Ogygia現在げんざい

原本げんぽん
L1282–L1288
発話はつわ
4
第だい5部ぶ
3/7
  • Calypso
  • Odysseus
  1. 転換てんかんOgygia――CalypsoがSirensの記憶きおくを引ひき出だす

Ogygia。Calypsoは思おもい出ださなければならないと迫せまる。Odysseusは拒こばむが、Calypsoは彼かれが古ふるい船ふねの残骸ざんがいを集あつめて筏いかだを作つくっていることを指摘してきする。OdysseusはSirensと呟つぶやく。

  • 記憶きおく
  • 制御せいぎょ

場面ばめん19

Sirens ── 欲望よくぼうと喪失そうしつの歌うた

Odysseusの記憶きおく

原本げんぽん
L1290–L1312
発話はつわ
12
第だい5部ぶ
4/7
  • Odysseus
  • Eurylochus
  1. 回想かいそうSirensの海域かいいきへ

回想かいそう。Sirensの海域かいいきに入はいる前まえ、Odysseusは兵へいの耳みみに蝋ろうを詰つめさせ、自分じぶんだけは歌うたを聞きくために帆ほ柱はしらに縛しばらせる。生いき残のこった者ものはいないという警告けいこくに、だから自分じぶんが最初さいしょになると答こたえる。後あとにEurylochusがどんな歌うただったかと尋たずね、Odysseusは自分じぶんが望のぞんでいたすべてだったと言いう。歌うたが彼かれに何なにを言いったかが、ここで語かたられ始はじめる。

  • 歌うた
  • 記憶きおく
  • 制御せいぎょ
Sirensの歌の中身原典(第12歌)の誘惑Odysseusを名指すTroyの苦難を知っている大地のあらゆることを知っている→ 知りたいという欲望映画の誘惑望んでいたすべて最も欲しいもの=失ったもの守れなかった約束→ 本当は帰りたくない、という自覚蝋で耳を塞ぎ、自分だけ帆柱に縛られるという行動は、原典にかなり忠実(第5部 注2)。
図ず 02Sirensの歌うたの中身なかみ。原典げんてんは「知識ちしき」で誘さそい、映画えいがは「取とり戻もどせないもの」で誘さそう。

場面ばめん20

CharybdisとScylla ── 六ろく人ひとを失うしなう選択せんたく

Odysseusの記憶きおく

原本げんぽん
L1314–L1364
発話はつわ
26
第だい5部ぶ
5/7
  • Polites
  • Eurylochus
  • Odysseus
  • Antiphates
  1. 回想かいそうCharybdis
  2. 回想かいそうScyllaの襲撃しゅうげき

回想かいそう。沖合おきあいの白しろ波なみの正体しょうたいは渦うず潮しおCharybdisだった。Odysseusは狭せまい峡谷きょうこくを避さけて渦うずを横よこ切きらせ、船ふねは辛かろうじて抜ぬけるが、Scyllaが兵へいを奪うばう。Odysseusがそれを知しっていて黙だまっていたことが分わかり、Eurylochusは言いっていれば死しなずに済すんだと責せめる。Odysseusは言いっていれば全員ぜんいんが死しんでいたと答こたえ、そう決きめる権利けんりが自分じぶんにはあったと言いい切きる。Tiresiasが他ほかに何なにを言いったのかと問とわれる。

  • 制御せいぎょ
  • 死者ししゃ
六人か、全員かOdysseusが知っていたことCharybdisを避けて狭い峡谷を行けば、Scyllaが兵を奪う渦を横切れば、船ごと失うかもしれない白=生き残る兵 塗り=奪われる兵(本数は図のための目安)兵に言わなかった理由「言っていたら、全員が死んでいた」Eurylochus「決める権利はない」Odysseus「あらゆる権利があった」原典でも、恐怖で漕げなくなるのを避けるため、Scyllaのことは完全には説明されない(第5部 注4)。
図ず 03「六ろく人ひとか、全員ぜんいんか」。映画えいがはこの原典げんてんの倫理りんり問題もんだいを、Eurylochusの追つい及およびとして台詞せりふにしている。

場面ばめん21

Thrinacia ── Heliosの牛うしと乗組員のりくみいんの破滅はめつ

Odysseusの記憶きおく

原本げんぽん
L1366–L1430
発話はつわ
33
第だい5部ぶ
6/7
  • Eurylochus
  • Odysseus
  • Calypso
  • Athena
  1. 回想かいそうThrinaciaへ上陸じょうりくするかをめぐる対立たいりつ
  2. 回想かいそうOgygiaのCalypsoの声こえが回想かいそう映像えいぞうに重かさなる
  3. 回想かいそう飢餓きがの末すえ、乗組員のりくみいんがHeliosの牛うしを殺ころしたことが判明はんめい
  4. 展開てんかいAthenaとの対話たいわ
  5. 回想かいそうEurylochusの声こえ
  6. 回想かいそう海うみへ出でた直後ちょくご、嵐あらしに襲おそわれる

回想かいそう。修理しゅうりと休息きゅうそくを求もとめるEurylochusに押おされ、一行いちぎょうは太陽たいよう神かみの島しまに入はいる。Odysseusは牛うしを屠ほふれば全員ぜんいん死しぬと誓ちかわせ、兵へいたちは長ながく約束やくそくを守まもるが、食料しょくりょうが尽つきて牛うしを殺ころして食たべる。問とい詰つめるOdysseusと、Athenaとの対話たいわが重かさねられ、Athenaは死しが彼かれの失敗しっぱいではなく彼かれら自身じしんの失敗しっぱいだとしたら、と問といかけ、なぜすべての責任せきにんを自分じぶんのものとするのかと迫せまる。凪なぎに誘さそわれて海うみへ出でた直後ちょくご、嵐あらしが船ふねを砕くだく。Odysseusは仲間なかまがどうなったか分わからない、と語かたりを結むすぶ。

  • 食事しょくじ
  • 制御せいぎょ
  • 死者ししゃ
  • Zeus’s law
Tiresiasの予言と実際に起きたこと難所予言(場面14)実際に起きたことSirens耳を蝋で塞げ兵は塞ぎ、Odysseusだけが聞く場面19CharybdisとScyllaどちらかを選べ(六人か全員か)渦を横切る。Scyllaが兵を奪う場面20太陽神の牛の島上陸すれば、飢えと反乱誓いは長く守られ、食料が尽きて破られる場面21結末帰れるのは一人だけ嵐。Odysseusだけが流れ着く場面21・22
図ず 04予言よげんは一ひとつも外はずれない。変かわるのは、Odysseusがそれにどう抗こうったかだけである。

場面ばめん22

Ogygia ── 七なな年間ねんかんの告白こくはくと「制御せいぎょを手放てばなす」教おしえ

Ogygia現在げんざい

原本げんぽん
L1432–L1478
発話はつわ
24
第だい5部ぶ
7/7
  • Calypso
  • Odysseus
  1. 現在げんざいへOgygiaの現在げんざいへ戻もどる

Ogygia。Calypsoは、彼かれが壊こわれた船ふねの一部いちぶとともに一人ひとりで流ながれ着ついたこと、自分じぶんを失うしなったままの彼かれを見みていたことを明あかす。Odysseusは何なに年ねんかを問とい詰つめ、七なな年ねんと聞きいて、蓮はすで監禁かんきんしていたのかと怒おこる。Calypsoは命いのちを救すくったのだと答こたえる。流ながれ着ついたとき彼かれが握にぎりしめていたものが示しめされ、OdysseusはPenelopeの名なを口くちにする。Calypsoは、自分じぶんの運命うんめいを自分じぶんで支配しはいしなければ気きが済すまない男おとこだと言いい、制御せいぎょを手放てばなして嵐あらしに身みを委ゆだねよと教おしえて送おくり出だす。

  • 記憶きおく
  • 制御せいぎょ
  • 留とめ針ばり
  • 西にし
制御の糸航路を自分で選ぶ場面06損失をすべて自分で防ごうとする場面07・20予言に抗う場面14すべての責任を自分のものにする場面21制御を手放し、嵐に身を委ねる場面22制御の糸(スタディガイド §1)Athena「なぜすべての責任を自分のものにするのか」とCalypso「嵐に身を委ねよ」は表裏(第5部 注7)。
図ず 05Odysseusの中心ちゅうしん的てきな欠点けってんは、傲慢ごうまんさというより、すべてを知性ちせいと意志いしで制御せいぎょしようとすることにある。帰還きかんの条件じょうけんは、それを手放てばなすことだった。

原典げんてん・神話しんわ・歴史れきし背景はいけいの詳細しょうさい補足ほそく

ここからは台だい本ほん本文ほんぶんそのものではありません。 原典げんてん比較ひかく・神話しんわ伝承でんしょう・歴史れきし考古学こうこがく・翻訳ほんやく上じょうの注意ちゅういを補おぎなうための解説かいせつです。台だい本ほんに明示めいじされない内容ないようは、本文ほんぶんと区別くべつして読よめるようにしています。

注ちゅう1 Melantho

原典げんてんの Melantho(Melantho) は、Penelopeに育そだてられながら主人しゅじんを裏切うらぎる侍女じじょで、求きゅう婚こん者しゃ側がわにつく人物じんぶつである。原典げんてんでは求きゅう婚こん者しゃEurymachusとの関係かんけいが示しめされるが、映画えいがではAntinousの愛人あいじんとして再さい配置はいちされ、Penelopeの織物おりものの秘密ひみつとTelemachusの不在ふざいを漏ろうらす情報源じょうほうげんになっている。

注ちゅう2 Sirensの歌うた――原典げんてんと映画えいがの決定的けっていてきな違ちがい

原典げんてん第だい12歌うたでも、Odysseusは部下ぶかの耳みみを蝋ろうで塞ふさぎ、自分じぶんだけを帆ほ柱はしらに縛しばらせてSirensの歌うたを聞きく。ここは映画えいがが原典げんてんの行動こうどうをかなり忠実ちゅうじつに残のこした部分ぶぶんである。

ただし、歌うたの内容ないようは大おおきく異ことなる。HomerのSirensはOdysseusを名指なざしし、Troyでギリシア人じんとTroy人ひとが経験けいけんした苦難くなんを知しっていること、さらに大地だいちで起おきるあらゆることを知しっていることを餌えさに彼かれを誘さそう。つまり原典げんてんの誘惑ゆうわくの中心ちゅうしんは「知識ちしき」と「自分じぶんの英雄えいゆう物語ものがたりを完全かんぜんに理解りかいしてくれる声こえ」である。

映画えいが版はんではそれが、より心理的しんりてき・自己じこ破壊はかい的てきな誘惑ゆうわくへ変かわる。歌うたは「最もっとも欲ほしいもの=失うしなってしまったもの」を突つきつけ、「守まもれなかった約束やくそく」を列挙れっきょし、最終的さいしゅうてきに 『本当ほんとうは故郷こきょうへ帰かえりたくない』 とOdysseus自身じしんに認みとめさせようとする。したがって本作ほんさくのSirensは単たんなる魅惑みわくではなく、罪悪ざいあく感かん・回避かいひ・自己じこ破壊はかい願望がんぼうを言語化げんごかする存在そんざいとして描えがかれている。

注ちゅう3 「聞きけば死しにたくなる歌うた」なのか

この脚あし本ほん本文ほんぶんに限げんれば、Sirensが直接ちょくせつ「死しね」と歌うたうとは書かかれていない。危険きけんなのは、聞きき手ての最深さいしん部ぶにある欲望よくぼうと喪失そうしつを結むすびつけ、そこへ近ちかづくこと以外いがいに耐たえられなくする点てんである。

Odysseusの比喩ひゆ――「皮膚ひふの下したにあって掻かけない痒かゆみ」――は、欲望よくぼうが充足じゅうそく不能ふのうであること自体じたいを苦痛くつうへ変かえる。映像えいぞうで彼かれが死しにそうなほど苦くるしむ場合ばあい、それはこの 接近せっきん衝動しょうどうと、取とり戻もどせないものへの絶望ぜつぼう を身体しんたい化かした演出えんしゅつと読よむのが脚あし本ほんには最もっとも忠実ちゅうじつである。

注ちゅう4 ScyllaとCharybdis

原典げんてんでも、Charybdisを選えらべば船ふね全体ぜんたいを失うしないかねず、Scyllaのそばを通とおれば六ろく人ひとを奪うばわれる。Circeは実質的じっしつてきに「六ろく人ひとを失うしなって全員ぜんいんを救すくえ」と助言じょげんする。

さらに原典げんてんのOdysseusは、恐怖きょうふで漕こげなくなることを避さけるため、Scyllaについて部下ぶかに完全かんぜんには説明せつめいしない。映画えいがのEurylochusによる「知しっていたのに言いわなかったのか」という追つい及およびは、この原典げんてんの倫理的りんりてき問題もんだいを正面しょうめんから台詞せりふ化かしたものになっている。

注ちゅう5 太陽たいよう神かみHeliosの牛うし

原典げんてんでは、Thrinacia島しまの牛うしは Helios の所有物しょゆうぶつ。部下ぶかたちは飢餓きがに耐たえきれず、Odysseusがその場ばを離はなれている間あいだにEurylochusの提案ていあんで牛うしを屠ほふる。HeliosはZeusに処罰しょばつを要求ようきゅうし、船ふねは雷かみなり撃げきで破壊はかいされ、Odysseusだけが生いき残のこる。

映画えいがは「上陸じょうりくするな」という指揮官しきかんの命令めいれいと「飢うえるくらいなら危険きけんを選えらぶ」という部下ぶかの集団しゅうだん意思いしを強調きょうちょうし、災さい厄やくを神かみ罰ばつであると同時どうじに、指揮しき系統けいとう崩壊ほうかいの結果けっかとして描えがいている。

注ちゅう6 Calypsoの七なな年間ねんかん

OdysseusがOgygia島しまでCalypsoに長期間ちょうきかん留とめられること、そして最終的さいしゅうてきに筏いかだで島しまを出でることは原典げんてんの主要しゅよう設定せっていである。映画えいがはそこへロートスによる記憶きおく障害しょうがいを加くわえ、関係かんけいを明確めいかくに「本人ほんにんの意思いしに反はんする拘束こうそく」として描写びょうしゃする。

原典げんてんのCalypsoはOdysseusに不死ふしまで提案ていあんするが、Odysseusは有限ゆうげんの人間にんげんであるPenelopeと故郷こきょうを選えらぶ。本作ほんさくでも「永遠えいえんは神々かみがみのものだ」という台詞せりふに、この対立たいりつが圧縮あっしゅくされている。

注ちゅう7 Odysseusの中心ちゅうしん的てき欠点けってん――「すべてを自分じぶんで支配しはいしたい」

この映画えいがでは、Odysseusの欠点けってんが単たんなる傲慢ごうまんさではなく、すべての結果けっかを自分じぶんの責任せきにんとして引ひき受うけ、すべてを知性ちせいと意志いしで制御せいぎょしようとすることとして一貫いっかんして描えがかれる。

Athenaの「なぜ、すべての責任せきにんを自分じぶんのものだと主張しゅちょうするの?」と、Calypsoの「支配しはいするのをやめて、嵐あらしに身みを委ゆだねなさい」は同おなじ主題しゅだいの表裏ひょうりである。このため彼かれの最終的さいしゅうてきな帰還きかんには、策さく略りゃくだけでなく「制御せいぎょを放棄ほうきすること」が必要ひつようになる。